2009年2月18日 この激変の時代をどう生きる? |
このような事態がなぜ起こるのか? |
昨年、秋に起こったアメリカのプライムレートの行き詰まりに端を発した世界同時不況は、立ち直りつつあった日本経済を直撃した。日本経済の牽引車である自動車産業や電機業界などは、今まで経験したことがないような業績悪化に襲われている。つまり極端に商品が売れなくなっている。 このような状況下で、企業は非正規社員(派遣社員)の首切りが連日報道され、大きな社会問題となっている。非正規社員の企業の窓口は、人事部門が担当しているところもあるが、会社によっては資材部門が担当している。これは固定費として扱うのではなく、比例費扱いをしているのである。比例費である以上、販売が減少すれば経費をカットするのは当たり前である。しかし、非正規社員はモノではなく、人間である。人間としての生活、社会的営みがある。それを企業の都合でそんなに簡単に首切りをしていいものだろうか。ここに社会問題化する要素が含まれ、日本社会の歪みを露呈している。 バブル崩壊後、日本は輸出頼みで、経済の建て直しを図ってきた。内需の拡大策を取らなかったから、輸出が激減するとダメージが大きいと言われている。 しかし、語られていることは、表面化した現象面のことであり、誰もが新聞を読み、テレビを見、書物を読めば分かることである。 この非常事態といえる世界同時不況がどうして起こったのか? サブプライムローンが行き詰まったことは知られているが、サブプライムローンと言う商品がどうして生れたのか?等について考えてみたい。 |
なぜなぜ問答? |
工場に行くと、『不良ゼロ宣言』というような垂れ幕や看板が掛かっているのをよく目にする。モノづくりをすると必ず不良は発生する。100%良品の取り組みをしても、やはり完全に不良ゼロは難しい。不良の発生する率(不良率)を際限なくゼロにする取り組みは重要なことである。 ある不良を引き起こす原因追究の方法に、『なぜなぜ問答』と言うのがあり、「なぜなぜを5回繰り返せ」と言う意味である。不良を起こす原因を一皮、一皮剥いてゆくと、最後に本当の原因に行く着くと言う意味。 最初の一皮剥いて出てきた原因はまだ本当の原因ではなく、それを引き起こす真の原因は隠れている。それをさらに追求すると二皮目の要因に行き着く。これを5回繰り返すと大抵の場合は真の原因にたどり着くという意味である。 この真の原因を見つければ、後はこれを正せば、不良が直ることになる。一皮目の原因や、その途中の原因を直しても、一部の不良は無くなるが、完全に良くならない、また不良が発生することになる。 真の対策になっていないと言うことである。 これはモノを作る上での話であるが、政治や社会の問題を解決するのも同じことだと考える。表面化した問題に対応する対策をいくら打っても、次々と問題は起こり続ける。もぐらたたき状態になる。 問題を引き起こしている真の原因に対して、きちっと手を打たなければ解決しない。 政治や行政関係で働く人は日本のモノづくりや品質管理について勉強すべきだと思う。 |
変化や現象が起こるためには、必ず原因がある。 |
物理学の世界では『エネルギー保存の法則』という有名な法則がある。 これは簡単に言えば物が動くためには力が働いていると言うことである。 力=物の質量×加速度 (F=m×a) で表されるが、世の中の変化も同じことが言える。 世の中(質量)が動く、変化(加速)するためには、何かの力が働いているはず。 その力が大きいと、大きな質量がある世の中でも速く動く。 そして世の中の変化がますます激しくなると言うことは、大きな力が働き続けていることを意味する。 |
世の中の変化を引き起こす力は何か? |
現象として現れたことは誰でも見れば分かるが、世の中の出来事は互いに複雑に絡み合っているので、真の原因は奥深いところにあり、なかなか分かリにくい。 しかし、ますます忙しいとか、仕事の仕方が変わってきたとか、工場の海外移転とか、派遣の非正規社員が増えたとか、年功序列が崩れてきたとか、給料が上がらないとか、モノの値段が下がってきた、価格破壊が起こっているとか、新製品の商品寿命が短くなったとか、いろんなことが起こるには、それなりの要因があるはず。 |
真の要因に迫る! |
真の要因を探る着眼点は、世の中の変化がますます速くなっていることです。物理的に言うなら、加速度がついていること。一定の速さで速く変化しているのではなく、時々刻々と速さが増しているという意味。有史以来、世の中は生成発展して、変化し続けてきているが、この20年ほど前から急激に変化が速くなり、ますます激しさを増している。 世界全体、世の中全体を激しく変化させる巨大な力を与えるものは何か? これが分かれば、変化への対応が出来る。 小生はこの要因を『ムーアの法則』と結論付けている。 これは誰もまだ発表していない始めての結論であると自負している。 『ムーアの法則』とは、半導体事業で世界NO.1の会社であるインテル社の創業者、ゴードン・ムーア博士が1965年に提唱した仮設で、『半導体の集積度は18ヶ月毎に2倍、2倍と進化する』と言うもの。 この急激な半導体の進化のおかげで、商品や、機器や、サービスや、モノづくり等あらゆる産業分野が恩恵を受け、次々と不可能を可能にし、夢を実現してきた。『半導体は産業の米』と言われるゆえんである。 1センチ四方の小さなシリコンチップの上に、数億個のトランジスタが集積されるようになり、さらに集積度が上がり数十億個となること予想がされる。こうなると人間の脳細胞の数と変わらない数になる。 膨大なトランジスタを小さなチップの上に収容できるようになり、回路技術はアナログ技術からデジタル技術に変わり、回路を動かすためソフトウェアが開発され、複雑で膨大なソフトウェアが組み込まれるようになった。半導体と言うハードウェアの進化に伴って、ソフトウェアも進化し続ける。その結果、生み出される商品や機器や装置やサービスやモノづくりの方法など、あらゆる方面で従来考えられなかった変化や進化が起こる。 なぜ、こんなに半導体が大量に使われるようになったのか? こんなに普及するためには、半導体の素晴らしさがある。 半導体は材料が地球の3/4を占めるシリコン、簡単に言えば石で出来ている。道端の石ころでは半導体として機能しない。非常に高い純度の結晶に精製することが求められるが、もともとの材料が安く無尽蔵にあること。これが金や白金のような超高価なものなら、半導体はこんなに大量に使われ、普及しなかったはずである。 さらに、半導体は真空管と違って、寿命が半永久的であること。 動作させても、真空管のように劣化しない、電線に電気を流すようなもの。言い換えると非常に故障が少なく、寿命が長く、信頼性が高い、いいこと詰めの夢のような部品である。 そして『ムーアの法則』は、同じ大きさのシリコンのチップ(片)、例えば1平方センチのチップ上に1000個トランジスタを集積した初期のIC(集積回路)と、最新の同じ1平方センチのチップに1億個トランジスタを集積したICでは、10万倍の規模の回路が構成できる。もし1000個トランジスタを集積した頃のICと比較すると、値段は10万分の一になる勘定になる。 さらに、ICの性能は1億個集積したものの方が動作速度が速く、消費電力も少ないと言う大きなメリットがある。集積度をあげると、性能・機能が向上し、消費電力が減り、値段が下がるという今までにない効果が得られる。 これは従来の商品価値感やモノづくりの観点からすると考えられないことである。 「いいものは高い」と言うのが従来のモノの価値感であったが、半導体の「ムーアの法則」は完全に、このモノの価値観を覆した。 さらに、半導体の製造は「スタンプ・プロダクション」と言えるような、一度マスク(版)を作れば、後は判を押すようにいくらでも造れる。自動で生産が出来る。一面、半導体工場は設備に非常に金がかかる。 従来のモノづくりの工場は50億円か100億円の投資をすれば、立派な工場が建設出来たが、半導体工場はその2桁以上の投資が必要になる。数千億円規模の投資になる。工場の設備償却と言う意味では大きな課題であるが、モノづくりの基本的な姿は従来の工場とは全く違ったものになった。 横道に反れたので、話を元に戻すと、 モノの値段は急激に下がり、価格破壊現象と言われるようになった。 薄型テレビや、DVDや、デジカメや、ケイタイなどデジタル家電といわれる商品は半導体の塊であり、「ムーアの法則」の恩恵や影響を直に受ける。半導体の進化により、さらに集積度が上がった高性能化した次世代の半導体が出来ると、商品内容が一変する。次々と半導体の世代が新しくなるので、その都度商品は高性能化して値段が下がる。 デジタル家電商品(平面テレビ、DVD、BD、パソコン・デジタルカメラ・デジタルムービ、携帯電話など)の商品寿命が極端に短く、春夏秋冬、年間4回もモデルチェンジされる所以(ゆえん)がここにある。 |