2009年8月13日 日本の高コスト体質を改められるか? |
自民党か、民主党か 日本の政治もいよいよ政権交代があるかどうか、興味深い状況になってきた。一時期を除いて、自民党が安定政権を維持してきたが、それniはそれなりの背景があったはずだ。 時代が動いたのは、ベルリンの壁が崩壊した時から大きく変わったと言われる。鉄壁を誇ったあのベルリンの壁が崩壊した時代の背景には何があるのだろうか。一説にはヨーロッパにテレビ、ビデオが普及し、情報を隠すことができなくなった、情報統制ができなくなり、国を越えて他国の体制や生活がドンドン入ってきて、共産国の後進性が暴露されて不満が爆発したと言われている。小生はたまたま業務の出張で西ドイツに行ったが、そのときは東西ドイツ統合の一週間前であった。近くの国境を越えて、東ドイツの見学に行ったが、西側国境には警備兵はなく、緩衝地帯が100mほどあり、東側国境には警備兵が10名ほど自動小銃を構えて検問していた。パスポートを見せるとニコニコしながら、話しかけてきた。 現場の兵士にも統合のうれしさ期待が垣間見えたのを覚えている。そして、東西ドイツの統合、ソヴィエト連邦の崩壊と共産圏諸国が相次いで崩壊していった。その結果、自由主義の大きな市場が生まれたが、一面、超低賃金労働力が世界の労働市場に参入した。 従来の自由主義諸国が築いてきた経済のバランスがこれで崩れ去ったのである。 その後の急激な世界の変化は凄いスピードで激流となって流れている。その変化の時代に長期安定政権を誇った自民党政治が、変化の対応ができないまま現在に至った。 しかし、それに気づいた小泉さんが小泉改革を訴え、郵政民営化に象徴される取組みを訴え、『自民党をぶっ壊す』と宣言して取り組んだ。 国民はそれまで日本の政治に倦んだりしていたので、小泉さんの『郵政民営化賛成か・反対か』というキャッチフレーズに酔い、小泉さんは大勝利を得た。 保守自民党がどう変わるか、楽しみに見てきたが、その後、小泉さんが居なくなった途端に、構造改革路線が見えなくなった。さらには刺客に刺された人や、自民党を離党した人も復党させる荒業をやったが、これは国民を愚弄する行為である。 まさに唖然とした。 『自民党をぶっ壊す』という過激な小泉さんの発言は行き詰まった日本に希望を持たせてくれるものと期待し、総選挙で皆が自民党に投票し、自民党は結党以来の大勝利を獲得した。 しかし、郵政民営化・構造改革の看板で選挙で勝利した政党が、次第に逆の方向に舵を切り、挙句の果て、総理まで『私は郵政民営化反対でした』の発言で、国民は自民党の体質が旧態然で全く変わらず、やはりダメかと見放すところまで来たのが現状だ。さらに党首の首の挿げ替えが続きに飽き飽きした。やはり、方針を変えるなら、堂々と総選挙で民意を問うべきだったと思う。これが自民党の大失敗だ。 民主党は若手を中心に力をつけて来た。若いということは何よりもフレッシュで、チャレンジアブルで、エネルギッシュで、すがすがしい感じがする。 政権交代ができるところまで成長したと思える。 総選挙を前にして、各党のマニュフェストが出揃い、各政党が目指すビジョン、政策が提示されている。いろんなことが提示されていて興味深い内容になっているので、しっかり見てみたい。選挙が終わり、政権獲得後、その政党が公約したことをきちっと実現しているか見守りたいと思っている。 そして、大変重要なことは、このマニュフェストが本当に実現できるかどうかはその内容が日本の現状の課題や、将来の課題を正しく見据え、その課題の本質を把握して、正しく処しているかどうかにかかっていると思う。ものごとの本質から離れた行為はいくら懸命にやっても結果は出ず徒労に終わる。 時代の激変は何故起こるのか正しく把握し、日本の将来ビジョンを描くことが重要である。 さて、それでは日本が置かれている現状をどう分析するかである。製造業がドンドン海外に進出し、このままでは日本に製造業がなくなるとまで言われる。それを防ぐために法人税を大幅に下げて、海外移転を防ごうと手を打ってきた。しかしそれでも製造業の海外移転は進行している。法人税が高かったので、国際的な水準に下げようと言う考えたのである。これは一つの要因であるのは事実と思う。税金は高いより安い方がいい。個人も、家庭も、法人も税金は安いに限る。それなら税金を安くしても成り立つような方策を考えなければならない。法人税を下げる代わりに福祉や地方交付税を引き下げると言うやり方は、同じパイの中で配分を変えただけである。これが現状の課題の解決策になり得るか? そう簡単に解が見つかれば苦労はない。法人税を下げた結果、企業の内部留保は大幅に増えたが、国民の生活が破綻状態になり社会的弱者は一層疲弊した。国内の購買力が低下して負のスパイラルに陥りつつある。このままでは日本国は破綻に瀕するのは間違いない。 製造業の海外進出のメリットは日本の人件費より20分の一や10分の一など、比較にならない安い賃金で人が雇えると言うことにあった。確かに低賃金は企業経営には魅力である。しかし、モノを作るという仕事、製造業が海外に移転し、そういう低賃金で働く労働者に仕事をさせて、うまく品質が確保できるモノづくりができるかどうかである。日本人は全国民が教育を受けているので、それなりの知識や技能を有する。海外に進出した企業が苦労するのは物を造る際の品質の維持をどうするかである。しかし現実にはどの企業もドンドン海外進出しそれなりに品質を維持し、モノづくりをしている。 どうしてそういうことができるのか? 例えば、アパレル、衣類は原産表示ラベルにMade in Chinaと表示されたものが多くなった。当初は下着などであったが、最近は紳士服、スーツも中国製が多くなっている。靴もしかり。これは縫製に使う工業用ミシンが日本から輸出され、高度な技術で作られた工業ミシンを使うことで、ちょっと教えると誰でも縫製ができるようになったからである。工業ミシンはマイコンが駆使され、糸の張り具合やいろんな縫い目など自由自在にできる。生地の裁断機もマイコンでプログラムされたとおりに寸分狂いなく裁断し、デザイナーの意思どおりにできる。 CDプレーヤは当初はデジタル技術の最先端商品であり、従来のアナログのLPプレーヤに比べて、その性能は100倍以上の超高音質を楽しめる凄い商品として登場した。出始めは20万円以上の値段であったが、当時はそれでもよく売れた。そのCDプレーヤが小型になりポータブルCDプレーヤは電池2個で動くようになり、値段は3,000円程度になった。初期100分の一以下になった。性能は一層良くなり、安定して動作するようになった。初期のCDはCDディスクの傷やバラツキで音が飛んだり、再生不能になることもあった。今は廉いものでもそういう不良は発生しないようになっている。その後、DVDが開発され、CDの6倍以上の情報が記録されるようになった。CDもDVDも12cmのディスクに情報が記録されるが、12cmを甲子園球場に例えるなら、情報の粒粒の大きさは1mm以下の砂粒に匹敵する大きさであり、そういう目に見えないような超微細な凸凹をレーザ光線により信号を拾い取り音楽や映像を再生したり、録音や録画ができるのである。これは凄い技術であるが、そういう超先端技術商品も中国ですぐに製造ができる時代になった。 なぜ、中国で造れるのか?? CDやDVD商品の中身を覗いて見ると、システムLSIという半導体でできている。このLSIにはトランジスタが数千万個、場合によると数億個も入っている。このおかげで、一個のLSIでCDプレーヤが完成できるようになった。抵抗器やコンデンサーと言う電子部品を基盤に自動機で貼り付けて、LSIを同様に貼り付けると基板が完成する。この基板とレーザ光線を発する光ピックアップと言う部品を取り付けると、CDプレーヤは完成できる。これらをプラスチックケースに入れるとCDプレーヤが生まれるのである。人がする作業は単純な取り付け作業で、特別難しい作業や知識は必要がない。CDやDVDですらこのように簡単に造れるようになったため、中国やその他海外で製造が出来る時代になった。 余談ながら、従来のアナログ時代のLPプレーヤは今なお日本で作っている。アナログはローテクと思えるが造るのは非常に高度で難しい技術がいる。アナログのLPプレーヤの性能はターンテーブルや軸受けの加工精度により、性能が左右されるので、製造現場の技術や技能が求められる。また製造のノウハウが重要で、他社がすぐに真似ができない。その点、デジタル技術のCDやDVD商品は性能が規格(フォーマット)で規程されるので、システムLSIやマイコンを手に入れれば、どこでも造れて、性能のバラつきが殆ど出ない。 製造業は造り方が従来のモノづくりから変わって来たから、どこでも造れる時代になった。どこでも造れるなら、人件費がよりやすいところを求めて、企業は海外に出てゆく事になる。日本でモノづくりしていてはコストが合わないとよく聞く。これを解決する策を真剣に考えないと、本質の解決にならない。モノづくりが変わったことはデジタル技術の進化による。そして、デジタル技術はムーアの法則に則って、1年半で2倍という集積度を実現する超高速な進化を遂げつつ、新製品が旧製品より高性能化して値段が下がるのである。システムLSIやコンピュータ(CPUやMPUやマイコンなど)がより高性能な新製品が旧製品より安い値段で造れると言うことは、従来の経済原則では矛盾することになる。このことが、現在のあらゆる社会現象の『牽引力』として働いているのである。自民党麻生さんの言われる『責任力』と言う言葉は何を意味するか理解しがたいが。そのことは既に記しているので参照願いたい。 そういう時代の流れの中で、日本が生きてゆくためのどうすればいいのかを考えてみたい。 海外旅行をして気づくことは、日本は食物にしても本当においしい食料品が豊富にある。単に豊富さと言う点では外国に負けるかもしれないが、味の良さでは日本の食料品は世界一だと思う。米、牛肉、果物等あらゆるものの味わいはとても素晴らしい。農産物も高品質である。高品質は日本の工業製品の代名詞であったはずだが、最近それが少しおかしくなっている。 われわれ日本は『量』を追うのではなく、『質』で勝負をするべきである。 農産物で言うと、欧米各国の地平線が見えるような広大な農地で作る麦や米やとうもろこしとどう考えても対応できない。 日本は手間をかけた味わいのいい農産物を作り、それを海外の富裕層に販売することを考え、そういうマーケティングを国策として取り組むべきである。工業製品も同様で一般、汎用品はコストが合わないので、先進、先端商品を開発し続けて常に一歩リードした商品を海外に提供することが大切。汎用品では海外とのコスト競争に真っ向から勝負することになり、コストが合わないことになる。得意、特殊技術を持ちそれを活かして商売することが求められる。そのためには高度な技術者の育成、その卵である子ども達の育成、教育が大切である。 そうこ考えると、これから真剣に日本が取り組まなければならないことは、従来のやり方を変えて、必要最小限のコストで政治や行政を進めて、社会全体の高コスト体質を改善することから始めないといけない。従来やってきたから、今年度も同様な予算を組むなどは全く間違った考えである。高コストな国の体質を徹底して見直し、最小限の予算で行政を行う。必要最小限の判断基準は安全、安心を必要なレベルで維持できるギリギリの線で見直す。例えば、新しい道路を作る場合、従来の国の基準では車道の他に両側に歩道をつけなければならないが、片側の歩道が車道一車線ほどの幅がある。 二車線の新しい道路を造る場合、4車線道路を造るほどの幅が必要になる。これでは新しい道路を造るのに用地買収費、工事費に多額の費用が掛かる。考え方を変えて、歩道は片側だけにして、幅は今の基準の半分にすると、全体の道路の幅が4分の3ほどでできるので、道路T建設費用が25%削減できる。この25%ケチった道路で自動車の安全な運行には全く問題がなく、人も安全に通れる、歩ける。これで十分である。こういう現状の過剰な国の基準を見直すことで必要な条件を満たしながら、国づくりを進めることで、コストは25%も下げられる。こういう例はいくらでもある。これができる官僚を増やして人材として重用すればいい。官僚の仕事の原点を根本から見直して働かせることである。 企業はコストを気にしないと、経営が成り立たない、即ち赤字経営は倒産することになるが、国や地方公共団体は親方日の丸で、予算が足りなければ国民から税金や国債発行となる。その繰り返しが現在の日本の姿になった。 高コスト体質の日本を見直そう!!。どの政党が一番、そういう点を改善できるか! それができる政党に投票したい。 |