2020年9月24日(木)~25日(金)
篠山~舞鶴~若狭~敦賀方面へ

 新型コロナウイルスの流行で旅行は差し控えてきましたが、マイカーで近くに出かけるのは大丈夫だろうと感染予防にマスクをし、注意しながら一泊二日のドライブに出かけてみた。
 観光地は人出がほとんどなくガラガラの状態で、観光バスもなく、ツアー客もほとんど見当たらず3密を気にすることもなく無事に行ってきた。

 行程は、まず道の駅「能勢クリの里」に立ち寄り、「能勢妙見山」に参拝し、丹波篠山に行き、篠山城下跡、旧商人の街を見て、少し戻り、「るり渓温泉」で宿泊し、この地方で取れる松茸?の「マツタケづくし懐石」を頂き季節を味わいました。
 地元マツタケが口に入るのはまず不可能と思ってゆきましたが、最初の焼きマツタケは松茸のよい香りがしました。他のマツタケ料理に使われている食材は、中国産か、カナダ産だろうと思います。そういう勘繰りはさておき、この温泉はたいへん静かな山中にありました。

 翌日は、雨のなか、舞鶴に向かい、「とれとれ市場」で一休みした後、三方五湖に向かいましたが、雨の中、ガスできれいな風景が見えず、ここは諦めて、さらに海岸線沿いの一般道路を東進し、敦賀に入りました。ここから関西電力三原原子力発電所に向かい、『原子力発電PR館』で展示物をじっくり見ました。

 今回は原子力発電所そのものをまじかに見たかったのですが、非常に警戒が厳重で、ゲートの前でガードマンや関電のスタッフに制止され、敷地に入ることはできませんでした。当然だとは思いますが、・・・・・・。

 原発へ至る取付道路は大変立派な自動車道が開通しており、この閑散とした過疎地は原発のおかげで経済が維持されていることを実感しました。原発に近づくにつれ、マイカー車内の空気が何か得体のしれない緊張感に包まれました。これはなぜだろう?

 関西電力美浜原子力発電所は、橋を渡り対岸に建設されていて、手前に原子力発電PRのため『関西電力美浜原子力発電所PR館』という2階建ての立派なビルが建っています。
PR館に入ると、案内嬢が出迎えてくれました。訪問客は誰もなく我々二人だけだった。

 詳しくは写真をご覧下さい
 能勢妙見山
 

能勢妙見山に立つガラス張りの記念館

 妙見宮に似つかわしくないモダンな建物で、何かと思った。
地下から階段を上って入るようになってたが、コロナで閉館中だった。
 山門

黄金の飾りが荘厳さを醸している。凛とした風情があった。
本殿

旧い佇まい
奥で読経されていた
本殿正面は左側(人が居る方) 
写真は側面から写したもの
 本殿内部
いろいろな灯籠がぶら下がっていた。真言密教?

宿坊か事務所 
石階段の側面に赤いのぼり旗が建てられている。
 右の石段を降りて入山する
帰り道はこれを登る

丹波篠山城跡 
史跡 篠山城跡 


観光客はチラホラという感じ
石畳を登ると、左手に大屋根の書院が見える

 
 
 
 
旧市街・丹波商人の街並み 
河原町商人街の看板


これに似た商家街は、近江商人の街が有名だ。
三方よし』を家訓として全国を飛び回ったという言う有名な話が伝わる。
 自分よし 
 相手よし
 社会よし

ここは丹波地方のひっそりとした商人の街

 
 街並みの規模は小さく、建ち並ぶ家々が少ない。
 まだ観光に力が入っていない感じ。
写真でも分かるが、電線が目面になり旧家の街並みの風情をぶち壊している。

電線を早く地中化して 本来の商人の街並みを再興してほしい。
商人街の一角
竹の巣の子が施されている真っ白の漆喰の壁がきれいだ 
風情のある玄関先の灯籠
木の引き戸や雨戸が時代を感じさせる
ここには『ウダツ』が見られなかった。

 
関西電力 美浜原子力発電所 PR館内
  
原子炉の模型
模型と言えども、威容を誇る。
分厚いコンクリートの原子炉の隔壁の内部に、鋼鉄製の炉心がある。
炉心は全体の原子炉格納容器に比べて小さく見える。
格納容器の上部に大きなクレーンが設置され、遠隔操作で炉心内のウラン燃料の交換などのメインテナンスが年に一度行われる。
  
 これがウラン燃料を格納した『炉心』
厚さ30cmの鋼鉄製の容器。
日本では、日本製鋼所だけが製造できる特殊な容器。
日本製鋼所は、太平洋戦争中の軍艦の大砲(特に戦艦ヤマトの大砲)など、特殊な鋼鉄製の機材を製造する技術が長けている。その技術が今、原発の炉心の製造に生かされている。

 この炉心で、ウランの核分裂反応が連続して起き、臨界状態を保ち、巨大な熱エネルギーを発生させ、高温高圧の熱水を発生させ、蒸気発生器で高圧の水蒸気に変えてタービンを回して発電するしくみ。
 右にある細い管が何本も束ねられたものが、ウラン燃料棒の束

 これがウラン燃料棒を束にした燃料集合体

もちろん、ウランは入っていない。約1cm角パイプに、ペレット状に加工したウラン燃料が詰められている。
燃料棒の長さは約4m。
それが何本も束ねられて燃料集合体になり、集合体を何束か炉心に収納する。

 ウランから出る中性子が互いのウラン原子核に衝突すると、核分裂反応が生じる。その際、元のウランの質量(重さ)より核分裂して生じる物質の重量が極僅か減る。これを質量欠損という。
 質量欠損が核分裂エネルギーとなり発生する。
発生する熱量は?
 e=mc2
 m〔kg〕 :質量欠損した重さ
 c〔m/s〕:光速

 光速は、3×10m/秒
 だから、その2乗で
 9×1016
 これは、とてつもない大きな数値で、巨大なエネルギーに変わる

 通常、ウラン1gの(核分裂)発熱量は、
 
8.2×1016〕=8.2×1013〔kJ〕

 通常の石炭の燃焼発熱量は、26,000〔kJ〕/kg だから、
 ウラン 1kgの発熱量は、石炭の約3000トン(300万kg)に匹敵する。
 重量比では、1/300万

 だから、100万kW級原発をウラン燃料棒の交換なしで、年中、発電できる。
 そのまま、数年間は発電できるが、安全確認のため、原子力安全規制法により、13ヶ月毎に稼働停止させ、定期点検を行うことを義務付けている。

  
 膨大な放射能を遮蔽し、放射能漏れを防ぐため分厚い鉄筋コンクリートで原子炉は覆われている。
 ウラン燃料棒(実物大 模型)


ジルコニュウムという特殊な金属管の中にウラン燃料が入っている。

天然には、ウランは235と238の二種類の同位元素が存在する。

その内、原子炉に使用できるのは、U235で、これを天然ウラン鉱石から分離する。
原発用ウラン燃料は、ウラン含有量が2~3%の低濃度のものを使用する。

 (注)原子爆弾を造るには、ウラン含有量が90%以上の濃度まで精製する必要がある。精製は比重の違いを利用して、遠心分離機を何段も縦列接続して高濃度のウランを抽出する。

  
 原子炉を冷やしたり、異常事態の緊急冷却などの安全装置が地下に設置されている。




 関西電力が採用している原子炉は、加圧水型原子炉(PWR)を採用している。
 ちなみに、東京電力が主に採用している原子炉は沸騰水型原子炉(BWR)と違う方式で、原発事故を起こした福島原発はBWR型であった。




 BWRは炉心で熱せられた水蒸気を気水分離装置を介して直接取り出してタービンを回すのに対し、PWRは炉心の高圧高温水(200度以上)を蒸気発生器で蒸気を発生させ、この蒸気を炉心から取り出しタービンを回す。2ステップ方式になっている。 BWR型とPWR、どちらも一長一短がある。
 
 PWRは構造上、高濃度放射能が蒸気に混入しないので、タービン等から放射能漏れ事故が少ないとも言える。PWR型は核反応を制御する制御棒は炉心上部から出し入れする構造になっている。
 BWRは、上部に気水分離装置があるため、制御棒は炉心の底から上下に出し入れする構造になる。高濃度放射能を含んだ水蒸気を取り出してタービンを回すため放射能漏れに厳重な注意が要る。原子炉の核反応の制御はBWRの方がやりやすい長所がある。
 


 福井県は原発銀座と言われる沢山の原発が設置された県だ。
 原発はメンテナンス工事のため地元に多くの雇用を生んでいる。

 美浜原子力発電所


今回、PR館を見学した。PR館は橋の手前にある。(この写真では見えない)

原発は丹生大橋(連絡橋;長さ455m)を渡った先にある。
丸い円筒状の建屋が原子炉。左から1号機、2号機、3号機
3号機は82.6万Kwで定期点検中。

 高浜原子力発電所


1号機~4号機
4号機のみ再稼働

大飯原子力発電所


1号機~4号機
1、2号機は運転終了
4号機のみ再稼働
中央部の湾内に白く排水している状況が見える。
 原子炉の水蒸気を復水器で冷却するが、その際、大量の海水で冷やす。
排水温度は高い。
 
少し面白い考察をしてみた。

 燃料棒は1cm四角、長さ約4mのジルコニュウム合金又はステンレス合金管の中に、1cmの円筒状ウランチップ(ペレット)が200個詰められている。

 この燃料棒を179本束ねて1束とする。これを121束、炉心に納めている
 要は、炉心には、179×121=21,659本の燃料棒が入っている。

 美浜原発1号機は、電力出力が34万KWとなっているが、効率が35%程度なので、熱出力は約3倍の97万KWとなる。

 定格電力出力が34万KWなので、燃料棒一本当たりの発電量は、
 340,000〔KW〕÷179(本)÷121(本)=15.7〔KW/本〕 となる。

 僅か1cm角・長さ4mの燃料棒、一本から15.7KW、(馬力に換算すれば20.6馬力)が得られる勘定になる。これは一般家庭の消費電力の8軒分に相当する。

1本の燃料棒に ウランペレット(直径1cm・長さ2cm)が200個詰められているので、ペレット一個で78.5Wの電気を起こしている勘定になる
 また、1個のペレットで、一般家庭(一軒)の約半年分の電力を供給することができる。
 キャラメルほどのウラン燃料で、家庭の半年分の電気が賄えるのだ!
 電力供給者にとって、これは夢のような話だった。
 『原発は絶対安全だ!』という安全神話の元で建設が進められ、各地で稼働してきたが、東京電力福島第一原発の原子炉のメルトダウンと水素爆発事故により、安全神話が崩れ去り、『原発は危険なもの』という考え方に変わってきた。
 
「原子核分裂反応をエネルギーとして取り出す」という技術は、不可避のエネルギー問題を解決する夢のような科学技術であった。
原子核分裂は制御不能に陥ると膨大なエネルギーと、長期にわたる放射線被害をもたらす。


 世の中は、良いことばかりではない!。
 何事も良いことがあれば、その反面があることを忘れてはならない!


 原発も、ウラン燃料の燃えカス(核分裂により生じた放射性物質)、放射性廃棄物が残る。
この処理場と保管場所が決まらない中で、原子炉が稼働し続けている。
世界中でも、放射線廃棄物保管場所が決まっている国はない。
(スウェーデンが岩盤をくり抜いて、仮保管場所を造っている。少し先行しているだけ)
日本は島国で、火山地帯で、地震国という不安定な地盤というハンディーがある。

 そういう中で、「造ってしまったことだから、寿命が来るまで使いたい」という電力会社の思惑は分からないでもないが、基本方針の転換を明確に打ち出すことが絶対に求められる
しかし、未だに原発依存の方向を変えていない「原発は重要なベースロード電源」と位置づけされている。

 その理由は、写真のウラン燃料を見れば分かる。
 約1cm角パイプにウラン燃料を入れた燃料棒を束にして、炉心に装填すれば、一年間は(異状がなければ)そのまま100万KWというとてつもない電力を発電し続けることができる。
 電力供給事業者にとって、石炭や石油や天然ガス等の化石燃料は、その手配から輸送や貯蔵など膨大な手間・暇がかかるのに比べ、原発は手がかからないという大きなメリットがある。

 しかしその反面のデメリットをよく考えてかからないと、『トイレのないマンション暮らし』になる。
 原発の発電コストは安いと言われてきたが、現状は高くついている。
 ①福島原発の事故以来の安全基準適合工事
 ②テロ対策のための設備補強費用
 ③廃棄物処理費用計上されていない。いくらかかるかも分からない。

 これらをコストに算入すれば、原発は安い電力源とは言えない。
 ただし、CO2を出さないという面では、メリットがある。
 排出ガスが出ないという面では、太陽光発電、風力発電など再生可能エネルギーがある。

 原発の是非をどう方向づけるかが問われている。