2023年7月2日(日)
やはり思ったとおり、老舗のニコン、キヤノンが強い!

 2023年6月11日(日) 『ソニーデジカメ戦記を読んでソニーがミラーレス一眼カメラで、老舗のキヤノン、ニコンの攻略に成功して、大きな成果を上げたと書いたが、そこで、老舗の2社が黙って座視することは絶対ありえず、必ず挽回策を打ってくるとも書いた。

 
直近のミラーレス一眼カメラのカメラ専門店の販売状況は下記のようになっている。

 ニコンの新製品「Z 8」が絶好調。 カメラ専門店全5社で初登場1位
 ミラーレスカメラ 売れ筋ランキング;カメラ専門店5社の売れ筋ベスト5

 5月発売 
ニコン新製品「Z8」が、データ提供全5社ですべて初登場1位と鋭い立ち上がりを見せた。
「ニコン Z シリーズ」のフラッグシップモデル「Z 9」(2021年12月発売)と同等の高い機能と性能を、堅牢性・信頼性の高い小型・軽量ボディに凝縮したフルサイズミラーレス一眼
 5月18日からニコンのカメラやレンズが価格改定されたことでの駆け込み購入が追い風となったのか、
値上げ対象となった「Z 9」がマップカメラとフジヤカメラで2位、ヨドバシカメラで3位と順位を上げている。

ヨドバシカメラ
 1 ニコン「Z 8」
 2 ソニー「α7IV(ILCE-7M4)」
 3 ニコン「Z 9」
 4 ソニー「α7IVズームレンズキット(ILCE-7M4K)」
 5 ソニー「α7R V(ILCE-7RM5)」

ビックカメラ
 1 ニコン「Z 8」
 2 ソニー「VLOGCAM ZV-E10パワーズームレンズキット(ZV-E10L)」
 3 パナソニック「DC-G100V-K」
 4 キヤノン「EOS R10・RF-S18-150 IS STM レンズキット」
 5 ソニー「α7IVズームレンズキット(ILCE-7M4K)」

カメラのキタムラ
 1 ニコン「Z 8」
 2 フジフイルム「X-S10ダブルズームレンズキット」
 3 ソニー「VLOGCAM ZV-E10パワーズームレンズキット(ZV-E10L)」
 4 キヤノン「EOS R10・RF-S18-150 IS STM レンズキット」
 5 キヤノン「EOS R50 ダブルズームキット」 ※2023年3月17日発売


 この状況は、想像したとおり。今後は3社が三つ巴の戦いを展開するだろう!
「高速連写」という願望を叶えたミラーレス一眼カメラは、今後、どういう新しい展開を試みるのだろうか?
 20枚/秒、40枚/秒や120枚/秒の写真をピンボケなく奇麗に連続的に撮ることができるカメラは、静止画と動画の境がなくなってくる。従来では考えられないような世界に突入している。

 昔、『いかに暗闇で写真が撮れるか』という課題があり、その解決策としてレンズのF値の勝負があった。
この頃はフィルムの時代であったので、フィルム感度(感光度;ISO値)も、ISO100から400になり、さらに高い感度のものもあった。しかし、フィルム感度を上げるには、フィルム感光材の粒子を大きくする必要があり、写真の微妙な表現性(写真の質)が悪くなる二律相反の関係にあった。カメラ自体のレンズの口径を大きくし、光を取り込むレンズの開口面積を大きくすることで、F1.0のような明かるいレンズが開発された。  レンズのF値競争があった。レンズ口径を大きくすると、焦点が甘くなったり、周辺のひずみが増えたり、思わぬ弊害も生じる。そのレンズの明るさ競争が一段落して、フィルム時代からデジタルカメラになり、受光素子の画素数の競争になった。最初は100万画素あたりだったが、300万、600万、1000万、2000万、そして今や5000万画素を上回るような超高画素時代に入った。単に画素数が多ければきれいな写真が撮れるという訳ではない。画素数が多くなると、一画素の面積が小さくなるから、画素に当たる光量が減る。そうすると、夕暮れなど暗闇で撮ると、写真にノイズ(細かなブツブツした点)が写りこむことになる。世の中は得てして、一方を立てると、一方が立たなくなるものだ。そこを技術開発力で克服してきた
 
 (余談)最近のスマホは以前の『バカチョンカメラ』と同等か、それ以上にきれいな写真が撮れる。一説には、スマホ用CMOSセンサーは、1億画素を超えるものができているようだ。しかもノイズが少ないきれいな写真が撮れると言われている。半導体の進化は留まるところを知らない。

 さて、何が言いたいのかというと、ミラーレス一眼カメラは、一眼レフカメラのミラーの反転という動作がなくなったので、高速連写のスピードが大きく改善された。しかし、一方でミラーレスカメラの欠点であったフォーカススピード(焦点合わせ時間)は一眼より劣っていた。その問題は、焦点合わせをコントラスト方式から位相差方式に改善し、さらにCMOSセンサー内の測距離センサーの改善で克服した。
 CMOSセンサーは半導体の日進月歩で、暗闇でも写真が撮れるように超高感度も実現した。

 ここまでカメラの性能が良くなると、他にどういう課題があるのか?、素人では考えが及ばない。
 次のカメラ(スマホを含め)の展開がどうなるのか? 楽しみだ!





2023年6月28日(水)
ミラーレス一眼カメラが熱い!!(その2)
ニコンが善戦!

  やはり想像していたとおり、キヤノン、ニコンはソニーに追随を簡単に許していないようだ! 
一眼レフカメラの老舗、キヤノン、ニコンは面目にかけても、真っ向から勝負を挑んでいる。

 高級一眼レフカメラは、最近ミラーレス一眼カメラに、お株を奪われつつあるように見受けられる。
それは既に述べたように、一眼レフカメラの強みだった焦点スピード(合点速度)の速さが、ミラーレス一眼カメラでも解決されたこと。
 逆に、ミラーレス一眼の強みは、ミラーがないことによる高速撮影が可能になる点だ。

 ソニーは撮像素子CMOSの製造では世界NO.1を誇る。特にスマホのカメラ用CMOSが圧倒的に多い。
ただ、スマホに使うCMOSは小さなチップであるが、ミラーレス一眼に使うCMOSは、35mmフィルムと同じサイズ。この大きなCMOS半導体に4000万個から5000万個の光を検出するトランジスタを1個の不良もなく並べる技術は凄い。ソニーは、ミラーレス一眼カメラに自社生産の最先端CMOSを優先して使っている。
 
 デジタルカメラはレンズCMOS画像素子画像処理エンジン(LSI)と記録デバイスリチュウム電池が主要な要素部材から成り立っている。
 
 キヤノン、ニコン、ソニーの3社は競いあって、素晴らしいカメラを開発し続けている。
 
 ミラーレスカメラでは、ソニーα1が一歩先んじたことを記事として書いた。その後キヤノンの巻き返しとして、最近の動向を書いた。

 直近のヨドバシカメラの売れ行きは、ニコンZ(Z9,Z8)が好調に売れているという記事を見た。
特に新製品Z8が性能面でZ9(フラグシップモデル)に迫るそうだ。

 
 
 高速連写が話題になっている。
 高速で飛ぶジェット機の離陸や、野鳥が飛び立つ瞬時の写真をボケることなく撮ることは、マニアの願望であった。それがこれらのカメラでは思うように撮れるらしい。
 カメラを被写体に向けて構えてシャッターを押す際に、野鳥などはいつ飛び出すか分からない。しかし、最近のミラーレスカメラは、シャッターボタンを押す1秒前から、カメラが作動して裏で撮影しているので、シャッターボタンを押せば、必ずその瞬間の写真が取れている。

 カメラを構えて、シャッターに指を添えた瞬間からカメラは撮影を開始しているが、シャッターボタンを押して初めて、1秒前の画像から記録素子に画像が転送されるしくみになっている。
 これを高画質で実現するには、画像処理エンジン、記録素子の動作が超高速でないとできない。
車のドライブレコーダが同様な方式で、事故時の映像を記録素子(SDカード)に記録するようになっている。
これは動画なので、厳しい解像度は要求しない。
静止画の場合は、各段厳しい解像度が要るので、その実現はハードルが高かった。

 今後、ソニー、キヤノン、ニコンに加え、Panasonicなどのメーカが、さらにより良いカメラに挑戦し続けることを期待したい。
 
     ニコンZ8(ボディのみ)   599,500円(税込)


参考

 ニコンZ8の性能
 ・電子シャッター速度;1/32,000秒
 ・メカニカルシャッターレス電子シャッターのみ
 ・高速撮影コマ数;20コマ/秒~120コマ/秒
 ・撮像素子;35mmフルサイズ(CMOSセンサー);4571万画素


 CanonEOS-M6仕様(現用中のカメラ)
 ・撮像素子;CMOS;APS-C(22.3×14.9mm) 2420万画素
 ・高速撮影コマ数;7コマ/秒 ;焦点追随時
            9コマ/秒 ;焦点固定時




2023年6月21日(水)
ミラーレス一眼カメラが熱い!!
キヤノンの巻き返し?

 6/11付け記載で、『ソニーのデジカメ戦記』の感想記事をアップしましたが、カメラの老舗、ニコンやキヤノンもミラーレスで負けるわけにはゆかず、次々とソニー対抗商品を打ち出しています。
 ニコンは、Z9 というフラグシップミラーレスを販売していますが、キヤノンも最近、EOS R6 MK2を出しました。これが各分野のカメラマンで高評価を得て、カメラ雑誌CAPAのコンペでトップに立っています。
 
 価格は、ボディー 396,000円(ヨドバシカメラ,10%ポイント還元)
 
特徴は、高速撮影に強いこと。飛行機、電車、カーレース、野鳥などの高速動体の撮影に強み
 ・高速連写;メカシャッター時:12コマ/秒  電子シャッター時:40コマ/秒
 ・AFスピード:0.03秒
 ・プリ撮影機能:シャッターボタンを押す0.5秒前から撮影が可能
   野鳥など撮影時に、被写体がいつ飛び出すか分からないチャンスを逃がさない!
   これは、車のドライブレコーダと同じで、裏でカラ撮影を行っている。
 ・撮像素子:35mmフルサイズ CMOSセンサー;2420万画素 
 ・画像処理;DIGIC X

ミラーレスではソニーが一歩先行したが、ニコン、キヤノンもすぐキャッチアップしている。
今後も熾烈な競争が続きそうです。





2023年6月11日(日)

ソニーデジカメ戦記を読んで
副題; もがいてつかんだ「弱者の戦略」
サイバーショットF1からα1まで


  日経BP 山中浩之著 価格1700円+税


 うっとうしい梅雨空が続いているので、自宅で、久しぶりにソニーをテーマとした本を読んだ。
この本は、山中弘之氏がソニーのカメラ事業を担当されてきた石塚茂樹氏と対談形式で書かれている。
久々に、ソニー魂に触れさせてもらった感じを受けたので、読後感をまとめてみた。

 ソニーの創業者の一人、盛田さんや、その後の出井さんの本は何冊か読んだが、いずれもソニーの独自のモノづくりについて書かれていた。ハードのついての内容が多かった。ソニーはいつの間にか、事業構造が変わってしまい、金融や保険や、プレーステーションなど、従来のTAV商品づくりのメーカから大きく方向転換しているように見えた。

 ソニー創業者の一人であった井深太氏が表した『SONYの設立趣意書』に会社設立の目的を8項目掲げているが、そのトップに、『真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設』と記されている。
 その自由闊達にして愉快なる・・・のところが、SONYのソニーたる所以だと思う。ユーザがどう思うかなど、ユーザ目線には触れていないように見えるところがソニーらしい。人のまねはしないという頑固さも見える。
 開発者が技能を最高度に発揮することで、のびのびと愉快に仕事をしようという感じにとれる。

 これとよく似た社是を掲げているのが、京都の堀場製作所『面白おかしく」という一見とんでもいない表現である。松下電器の綱領は、『産業人たるの本分に徹し、社会生活の改善と向上を図り、世界文化の向上に期す』とある。社員は真面目に世の中のために働くのだよ!という感じ。

 さて、本書を読んで見ると、『なるほどそういうことか』と気づかされるところが随所に見られる。ソニーと言えば、盛田さんがアメリカに出張する際に、飛行機の中で過ごす時間中、音楽が聴きたいという思いを叶えたのが、大ヒットしたウォークマンであったという話がある。
 
 ウォークマンは、何も革新的技術を駆使した商品ではなく、既存のカセットテープを入れて、ポケットに収まるほどの大きさにまとめたという商品である。それも、カセットテープより、少しだけ大きいサイズに。
 しかも、ウォークマンは再生機能だけで、録音機能はない、常識的にはいわば欠陥商品だった。
 サイズにこだわり、電池で数時間音楽が聴けることだけに徹底してこだわった。それで良し!と割り切って商品化したこと。しかし、ポケットに入る大きさには絶対妥協しなかった
 そのために、カセットメカニズムはがらりと新設計し、全く発想を変えたメカを開発した。薄くするために使用する鉄板はステンレスの極薄板も多用した。

 ソニーには取材用に愛称、『デンスケ」と呼ばれる肩掛けのカバンのようなカセット録音機が既にあった。
これはプロ仕様にも耐えるもので、高価な商品であった。

 もし、ウォークマンに録音機能も付けることが条件であったなら、ウォークマンは生まれなかったと思う。
音楽をどこででも気軽にヘッドフォンやイヤーホンで聞けることがポイントだった。
 録音カセットテープを再生するだけなら、少々テープ走行の精度(スピードやワウフラッターというテープスピードのフラツキ・ゆらぎ)があっても、そう気にならない。これに録音機能を付けると、厳しい性能が要求される。カセットデッキのような頑丈なメカになってしまう。その辺の割り切りが世界を制覇したウォークマンの企画の妙であった。
 これは、ずいぶん古い話で、今はもうオーディオは、アナログからデジタル化したので、アナログ時代の苦労話は昔の話になる。


 さて、本題の『ソニーのデジカメ戦記』に戻るが、副題として『もがいてつかんだ「弱者の戦略」』となっている。デジカメが登場した頃は、CCDやMOSという半導体受光素子は画素数が10万画素程度で、画質が荒く、カラーの表現力も乏しかった。到底、カラーフィルムに太刀打ちできるレベルではなかった。

 デジカメは、レンズ・受光素子・画像処理エンジン(集積回路)・液晶表示素子・記録素子・電池の6つの要素部品からできている。 当時、この6つの要素技術は次第に開発が進んでいた。
 ビデオカメラが少し先行して商品が出されていた。ビデオは動画の録画・再生機なので、あまり厳しい画質性能がなくても何とか実用レベルに近づいていた。
 一方、静止画を撮影するカメラは、高い性能が要求される。しかし、その時点の技術レベルは、今一の性能でしかなく、商品として認められるかどうか、という状態だった。

 しかし、半導体技術は、ムーアの法則により、2年で倍々の集積度が向上し、とてつもない速度で高性能化が進んでいた。受光素子や画像処理エンジン、液晶など半導体関連の部材は日進月歩で進んでいた。
例えば、受光素子は、あっという間に100万画素を超え、130万画素、200万画素、さらに・・・高画素化した。
 同時にカラー液晶の表現力も大幅に良くなり、きれいになった。問題は、撮った写真データを保存する記録媒体のデータ容量が少なく、撮影枚数に制限があった。そういう初期のデジカメの黎明期にあった。

 この辺から、本書の記事に入る。
 デジカメはスマホの出現で、カメラはスマホという時代になった。スマホは、誰も持っている・いつでも持ち歩ける・動画も静止画も撮れる・ネットで共有できるという万能と言える道具が誰も手に入る時代になった。
当然、スマホはカメラの市場を食い荒らしてゆく。

 バカチョンカメラでデジカメ時代を築いたメーカは相次いで撤退を余儀なくされた。ソニーはその中でも生き残り続けた。まず、デジカメで大ヒットした「サイバーショット」もスマホには勝てず苦戦した。
 生き残り戦略は高付加価値商品、即ちデジタル一眼カメラへの転換だった。そこで、レンズ交換ができる一眼カメラは大きくて重いという常識を覆す。

 ミラーレス一眼カメラを展開し、さらに受光素子を35mmフルサイズにしたミラーレスα7シリーズを発売
そこで、高級カメラはデジタル一眼レフカメラが常識のなかに、ミラーレスデジタル一眼カメラを投入し、ミラーレスの弱点を数々の技術進化で克服して、逆にミラーレスによる強みを発揮した決定版商品を開発して、カメラ市場の常識を破った

 しかし、プロカメラ市場やハイアマチュア市場は、従来の老舗であるキヤノン、ニコンが圧倒して市場を制覇していた。
 そこで、ソニーの戦略は?
 カメラとしての性能・機能は、フルサイズミラーレス一眼α1が圧倒していた。あとはユーザや市場の
評価を覆すことだ。ソニーはプロカメラマンのサポートや、市場での商品サポートの充実や、販売サポートやカメラ雑誌のサポートなど高級カメラ市場のソフト面でのサポートを強化した。

 カメラ本体のハード面の優位性はミラーレス一眼の方が強くなったので、ソフト面のサポート強化作戦により名実ともに高級デジタル一眼カメラの頂点を極めることに成功した。

 SONY フラグシップ一眼カメラ紹介 YouTube動画は下記のYouTubeにアクセスしてください。
   https://youtu.be/e0lLCqmHSSg

  フラグシップモデル ミラーレス一眼カメラ 比較表
 SONY
ILCE-1 α1
CANON 
EOS R3
NIKON 
Z9
   
 フルサイズ、 5010万画素  フルサイズ、2410万画素   フルサイズ、4571万画素
 フォーカス測定;759点  フォーカス測定   点  フォーカス測定;493点
連続撮影コマ数:30/秒  連続撮影コマ数; 30/秒   連続撮影コマ数;20/秒
 動画撮影;8K  動画撮影;6K  動画撮影;8K
 729,800円(オープン価格)  675,000円  772,200円
   価格は変動します。スペックに誤記がある場合があります。

  一眼レフカメラと、ミラーレス一眼カメラの優劣はどこにあったのか?
 一眼レフカメラは、レンズを通った画像(光)は45℃傾斜した鏡(ミラー)で反射して上部に置かれた焦点測定受光素子に当たる。ここでコントラストや位相差検出し、画像処理半導体でピンボケを修正するAF信号を焦点合わせレンズに送り、フォーカスを瞬時に合わせ、ピンボケを無くする。
 さらに、ミラーの反射光をプリズムを使い、ファインダーで撮影画像が見える構造になっている。

 シャッターボタンを押すと、ミラーは反転し、レンズから入ってきた画像(光)は、フィルムに相当する撮影受光素子に当たる。そこで得られた画像信号は画像処理エンジンで、画像データになり記録素子に送られ記録される。この一連の動作は、ピントを合わせる時間が短いほど、ピンボケのないきれいな画像が多く撮影できる。一眼レフカメラは、焦点検出受光素子を、写真撮影受光素子とは別に設けることで、ピンボケのない写真が一秒間に5枚から10枚ほど(最高機種は20枚程度)撮れるようになっていた。

 一方、ミラーレス一眼カメラは、反射板のミラーがない。撮影する画像(光)は直接、撮影受光素子に当たる。この方式は、焦点を合わせる受光素子として撮影受光素子の一部を使っていた。撮影受光素子の中にピントを合わせるためのAF受光点がいくつか組み込まれていたが、当初はその数が少なく、しかも焦点を合わせるAF方式はコントラスト方式であり、ピントが甘く、ピントを合わせる時間が長くかかっていた。シャッターを押して、ピントが合うまで少し待つ必要があった。その後、AF検出方式は位相差方式に改善され、ピント合わせの精度や時間は改善したが、撮影画像の一部でピントが合うが、全体画面ではピントが甘く、一眼レフカメラで撮った写真の出来栄えに叶わなかった。

 このミラーレスカメラの弱点をソニーは自社の独自の半導体受光素子開発で克服して、その弱点を無くしたことが勝因である。
 
 逆に、ミラーレスカメラの強みは、ミラーがないことだ。一眼レフカメラはミラーが機械的に上下するので、ミラーの反転時間がかかる。いくら速く動かしても、一秒間に反転させる回数には限度がある。このことは、一秒間に何枚の写真が撮れるかの限界値になる。しかも、高速でミラーを反転させる動作を繰り返し行う高い信頼性を保つことは非常に難しい課題である。キヤノンやニコンは長年のノウハウで克服してきた。

 一方、ミラーレスはミラーがないので、全くこの問題はない。
 ソニーα1は、一秒間に20枚以上(最大30枚)の撮影ができるようになった。さらに、電子シャッターによる撮影では、約200枚/秒撮影ができる。

 ミラーレス一眼カメラのもう一つの優位性は、ミラーが反転する際の『ガシャ・ガシャ・ガシャ」というメカの作動音が全くしないこと。
静かさを要求される撮影場面、例えばゴルフのホールプレー、取材会場の撮影など、カメラのシャッタ-音が気になるが、ミラーレス一眼は、電子シャッター時は無音で撮影できる。画素数は5千万画素を超え、最高の画素数を誇る素晴らしい一眼カメラが完成した。

 物事には二律相反性や、裏・表が必ず存在する。
 世の中の有様として、『良いことばかりではなく、良いことがあれば反面悪いことも必ず存在する』
 モノづくりの世界では、良い面をさらに良くし、悪い面や弱点を克服することに成功すれば、他を圧倒して勝つことができるという良い事例だと思う。

 もう一つは、いくら成熟しきった市場と言えども、その市場を席巻するガリバー企業がいても、どこかに弱点を有しているので、その弱点を見つけ克服すればガリバーに対して優位に立てる余地がある。

 この事例は、衣類・アパレル業界のユニクロや、モータ関連商品のNIDEC(日本電産などがある。
逆に、今、ガリバーであっても、自社の弱点は何かに注意し、その補強や改善に取り組むことが重要だ。

 そして、ソニーの石塚さんの座右の銘?
 こだわり・わりきり・おもいきり
 に共感を覚える。

 世界を風靡した『ウォークマン』は、超小型・ポケットに入る大きさという「こだわり」と、再生しかできない「わりきり」の最たる商品だった
 そして、やろうと決めれば「おもいきり」徹底して取り組む姿勢が大成功に通じるのだろう。

 加えて、華々しく見えるソニー高級カメラの成功談も、ミノルタ(コニカミノルタ)カメラとの合併で、交換レンズや一眼レフカメラづくりのノウハウを吸収できたことも見逃せないだろう。


 いろんな成功談があるが、成功した結果を振り返ると、必ず「そういうことか」と納得できる要因がいくつかある。逆に失敗談にも、同様にその要因がある。

 しかし、急に成功できたのではなく、着実に取り組み、歩みを続けているうちに、徐々に成果が積もり続けて、ある時に勝利の旗が翻る。 また全ての取り組みが成功に結び付くわけではない。

 『ソニー デジカメ戦記」を読んで、ソニーにはデジタルカメラを構成する部材を既に自社で生産していた。
CCDやCMOSという半導体受光素子では(旧)松下電器と並んで、世界で有数のメーカであった。レンズ画像処理エンジン(LSI)はビデオなどで既に商品化していた。記録メディアとしてのメモリーは、メモリーカードを提唱していたが、この規格化はうまくゆかずに終わっている。記録カードは、SDカードに敗れた。電池はリチュウムイオン電池を真っ先に商品化している。デジタルカメラはそういう要素部品の組合せの上に成り立っている。
 
 そのような各社の競争の中で、デジタル一眼カメラ市場のトップに躍り出るためには、各要素部品の技術力を他社がまねのできないレベルまで高める必要がある。さらに一眼レフとミラーレスという商品の基本構造の優位性を見抜く先見性や洞察力がモノをいうことになる。加えて、プロ仕様となれば、プロカメラマンの要望や共感を得る地道な努力がいる。

 今後、キヤノン、ニコンがソニーα1にどう対処するかが見ものである。われわれ、素人には、分からないミラーレスの他の弱点があるかもしれない。もしそうであれば、キヤノン、ニコンはそこをついてくるだろう。

 そういう競争を繰り返して、商品が一段と改善し磨かれることになる。頼もしいことだ。

追記
 キヤノン、ニコンもミラーレス一眼をラインアップ。
 キヤノンはEOS-R3、ニコンはZ9など高級ミラーレス一眼も導入。SONY α1を追随している。
Canonミラーレス一眼フラグシップモデルは、EOS R1になるが、発売は2023年後半だそうだ!
 ソニーはα1で先行したが、キヤノン、ニコンに対して、Charengerのスタンスを崩していない。互いに熾烈な競争を続けているので、どの時点で評価するかにより、ランキングが入れ替わるかも知れない。

 キヤノンEOSーR3もα1同様に、連続撮影30コマ/秒を達成している。
 ニコンは、Z9でファームウェアをアップデートした。いろんな場面や使い方の幅を広げている。

 カメラは総合性能で評価すべきだが、写真の描写力はレンズとカメラで決まる。静止画だけでなく、動体撮影能力も重要になる。その実力の一つが高速連写、連続撮影コマ数で表現される。特にスポーツの選手の激しい動きや、オートレースのような時速300kmにもなる高速動体を奇麗に撮れるかどうかが課題である。現状では、3社に大きな差はないようだ。

 プロ用や高級マニア向け商品は、使用者の嗜好により商品が選択されることが多い。こだわりや趣味性が強くなるほどその傾向が強くなる。いわゆる信奉者を獲得すれば、次々と買ってもらえることになる。
 そういう意味では、カメラの老舗であるキヤノン、ニコンは非常に強烈な愛好者を持っている。そこに第三のソニーがいかに食い込むことができるかが課題であった。
 
 そこに、本書の『もがいてつかんだ「弱者の戦略」』という副題の意味合いが感じ取れる。
 α1は、そういうキヤノン、ニコンの牙城に攻め込み始めたということかと思う。
もう少し、今後の各社の動向を注視してみたい。ユーザとしては楽しみだ!!