2024年2月2日(金)
EV化は無理筋の話!
『自動車はEV(電気自動車)になる』と言われているが、ガソリンエンジン車やジーゼルエンジン車が無くなり、本当にEVに取って変わるのだろうか? ホンダは『2030年にすべてEVにする』と言っているし、ヨーロッパや、中国はEVが売れている。 中国は、国家戦略として多額の助成費を出して、無理やりEVを進めている。建前は排気ガス対策、地球温暖化対策となっているが、本音はガソリンエンジンの開発は、ノウハウの塊で、長年の地道な技術蓄積が必要となり、今からやっても追いつけないという弱音が透けて見える。EVなら、ガソリン車の数分の1の部品点数で造れるし、モータは既存技術の延長線上にあり、スタートラインは各国と同じ立ち位置に着ける。 現状を見る限り、EVが主流になり、ガソリンやジーゼル車を駆逐するか?は『否』である。その理由は、EVは解決しなければならない根本的な大きな課題がある。 現在、自動車はガソリン車、および軽油を燃料とするジーゼルエンジン車が主流である。世界中にある膨大な台数の自動車が、もしEV(電気自動車)に代わると、膨大な電力を消費する。この電力をどう供給するのかがまず問題になる。 次は、EV側の問題で、車を走らせるには、大きなエネルギー(電力)を消費する。この電力をバッテリーに蓄えなければならない。昔は、バッテリーと言えば、鉛バッテリーであった。今もなお、鉛バッテリーはエンジンスターター(セルモータ)、ヘッドライトや、車内のアクセサリー機器(AV機器など)の電源として使用している。鉛バッテリーは廉い割りに大電流を取り出すことができるが、鉛は比重が大きいので重い。しかも、寿命が短い。だから、これを使ったEVは商品として成り立たない。 そこで、新開発されたリチュウムイオン電池を使い、何とか満充電で数百km走れるEVが開発された。 そもそも、リチュウムイオン電池が生まれるまではEVは不可能と考えられてきた。 リチュウムは希少金属であり、高価な材料であり、産出場所が限られている。中国が最大の産出国だったが、最近は中南米、その他に鉱床が見つかり出した。 このリチュウムを膨大な量のEV車に使うには、コストの問題が大きい。さらに、リチュウムイオン電池ですら、重量当たり充電できる電気量が課題になっている。長距離、長時間走るには大容量電池を搭載しなければならず、電池の重量が大きくなり、その結果、車重が重くなる。そうなると、走行可能距離が少なくなる。 現状は、満充電の走行距離は、300Km~700km位である。しかも、夏は冷房、冬は暖房を利かせると、走行距離はさらに短くなる。 この冬、ヨーロッパや北米、中国北東部は大寒波が襲来し、マイナス20℃以下になったところがありEVは走行不能になったようだ。これはドライバーの命に係わる。充電スタンドも寒さで動作不能になり、EVはいたる所で停車し放置を余儀なくされたと報道されている。 まとめると、EVは電力を供給するインフラシステムと、EV車自体の電力蓄積デバイス(電池)の問題が解決しない限り、一般に普及することは難しい。電力供給インフラは力仕事(お金をかける)で解決できる問題だ。EV車用の電池は、コストや重量や蓄電容量をクリアする発明が必要となる。 少し、見方を変えて考えてみる。 EVを使用するためには、充電スタンドで充電(チャージ)するか、家庭の電気配線(AC単相200V)から充電する。急速充電スタンドの場合、高圧電力線(6600V)から、電圧を下げて直流に変換して充電プラグに繋がっている。一般充電スタンドは200V、3.2Kw~6KW程度。(家庭用大型エアコン程度の電力) ニッサンリーフの場合、バッテリー容量が40KWhと60KWhの二種類の電池が搭載されている。 (注)荒っぽい換算になるが、 鉛バッテリー(32Ah)の場合;容量は 12.6V×32Ah=403Wh EV車は、鉛バッテリーに換算すると、100.個(40KWh)~150個(60KWh)も積んでいることになる。 鉛バッテリーの重量は、32Ahタイプで、9㎏前後だから10kgとすれば、EVを鉛電池で動かすには、 電池重量だけで、1トン~1.5トンということになる。これでは重くて、車としてつかえない。 確かに、リチュウムイオン電池をつんでいるEVですら、電池重量は数百kgになっている。 40KWhhの電池では満充電で約320km走行できるらしい。これはカタログ値であり、エアコンや暖房を利かせると極端に走行距離が下がる。 ガソリン車の燃料代と、EVの電気代を比べてみる ・EVのバッテリー容量を60kWh、電費を6Km/KWh、電気代を31円/KWh(家庭用電気代)、 ・ガソリンエンジン車では、燃費を10km/リッター、ガソリン代を170円/リッター、 とすると、同じ距離を走るのに、EVは4,978円/月、ガソリン車は5,100円/月 となる。殆どEVとガソリン車の燃料代は同じになる。 これは家庭用電源で充電した場合の話で、電気スタンドでは約半分位になる。ハイブリッド車(20km/リッター)の場合は、2,550円。 さて、EVになると、充電のために大量の電力が必要になり、電力インフラの見直しが必要になる。 一世帯が1年間に消費する電力量は、4,258KWと言われている。一日当たりでは、11.7KWh 日本の自動車が全部EVに代わると、使用電力総量は10から15%アップする。これは、原発(100万kw)が10基か、火力発電所(50万kw)なら20基分に相当し、発電所を増設する必要がある。さらに、充電スタンドの設置に全国で14兆円から37兆円が掛かるらしい。 充電時間がかかる割りに、走行距離が短いのも大きな問題になる。 充電スタンドには二種類あり、急速充電スタンドと普通充電スタンドである。急速充電スタンドは90kWhで充電できる。例えば、ここで30分充電すると、45KWhの電力が充電できるので、EVの電費を7Km/1Kwとすると、315km走れる。しかし、ガソリンの給油は数分で満タンになり、500km~1000km走れる。そういう点でも、まだまだEVは課題がある。 これを解決するためには、 ①数分で、数十kWhの充電電池を開発する ②走りながら、充電する(受電する)システムを開発する しかない。 車が高速で走り続けるためには、相応のエネルギーが必要になる。 そのエネルギーをガソリンで供給するか、電力で供給するかの問題であり、いずれの場合も大きなエネルギーを必要とする。 EVが普及した場合、EVを総消費電力(総需要電力)の平準化にどう役立たせるかが課題となる。うまくEVを活用すれば、夜間の電力需要が少ない時にEVに充電するなら、余剰電力の平準化に寄与すると考えられる。 電気は、『生もの』なので、発電した電力を使い切ることが一番効率がいい。発電量が消費量を上回れば、電力系統が不安定になる。逆の場合も不安定になる。 原発は一度発電を開始すれば、次の定期点検まで一定の出力で発電し続ける。原発は発電量を細かに調整することは難しい。一方で、火力発電は夜間、発電量を下げ、昼間の電力需要が大きい時に最大発電を行う。水力発電は、簡単に細かに発電量が調整できる。風力発電は風の強さにより自然任せで不安定な発電である。太陽光発電は昼間しか発電しない。電力会社はそういう発電の種類を組み合わせて、総需要電力を賄う調整をしている。 EVが各家庭で使われだせば、大きな電力のダムが形成できる。発電と受電(消費)の制御システムがネットワーク化されれば、電力受給系統の一つの解になる可能性がある。今後の課題だ。 |