2025年5月11日(日)
デジタル音声通信『FreeDV』を始めました!

 今年も5月に入りました。以前、この時期、周辺で「鯉のぼり」が元気よく泳ぐ姿を見ましたが、最近は殆ど見なくなりました。世の中の行事、しきたりが変わってきました。しかし、季節は移り替わり、今は新緑が大変きれいです。

さて、アマチュア無線の交信は相変わらず続けています。最近、デジタル音声通信にトライしています。 これは、《FreeDV》という新しいデジタル音声通信の呼称です。以前、FT-8について書きましたが、今回は「音声」での通信についてです。

FreeDVの基本的な仕組みについて
 送信の信号の流れは、次のとおりです。
 まず、パソコンに『FreeDV』のアプリをインターネットからダウンロードし、インストールします。これでパソコンの準備は完了です。
マイクから入った音声信号はFreeDVのAD変換回路デジタル信号に変換されます。そのデジタル音声信号を送信機(リグ)の音声入力端子(またはマイク端子)に入力します。この信号をリグでSSB変調し、アンテナから発射します。

 受信の信号の流れは次のとおりです。
 アンテナで受信した電波(高周波信号)は、SSB受信機で検波され、デジタル音声信号になります。このデジタル信号をパソコンに入力し、DA変換回路音声信号に変換します。
以上が、超簡単な『FreeDV』についての送受信の流れです。

 実際の送受信信号処理は大変複雑なソフトウェアで処理されます。
送信の際、マイクから入る音声信号をパソコンのFreeDVソフトのボコーダー」で符号化してデジタル信号に変換します。簡単に言えばAD変換ですが、音声信号を単純にデジタル化すると、帯域が広がりSSBによる通信はできません。そこで帯域圧縮をし、デジタル信号化します。ここにFreeDVのミソがあります。
 ICレコーダー等、音声をデジタル処理する商品はありますが、これはMP3その他の方式で帯域圧縮してSDカードなどに記録します。その際の帯域圧縮により音声品質が悪くなります。耳で聞いて十分な音質に聞こえますが、原音に対しては品質が劣化します。このMP3などの方式は通信に使える周波数占有帯域をオーバーします。そこで新しい圧縮方式を開発しています。現在、FreeDVで使用されている方式(モード)は、RADE-V2と呼ぶボコーダを使っています。
 (注)ボコーダーとは、Voice Endorder (音声を符号化する回路、通信用の帯域圧縮技術)

 RADE-V2は、デジタル信号帯域を2KHzに抑えながら、音声帯域は8KHzまで再生する優れものです。
ボコーダーの設計上の難しさは、言語の特徴に対応しなければならないことです。日本語は母音が中心の言語ですが、英語や中国語など外国の言語は子音が中心の言語です。子音は破裂音が多く使われますので、高い周波数がキチンと再現できなければ通話が困難になります。高い周波数まで再生するにはAD変換時のサンプリング周波数を高くする必要がありますがデジタル通信用としては制限があります。
 要は、大変狭い帯域にデジタル信号を収めつつ、再生音質品質を保つことに工夫がされています。
この点において、FreeDVのRADE-V2モードは大変素晴らしい再生音を提供してくれます。交信時のSNR(信号対雑音比)が良い状態であれば、FM放送並みの音声で交信が可能です。
受信時は、アンテナで受信した電波をリグでSSB復調し、デジタル信号に変え、さらにパソコンでDA変換します。この際に、デジタル信号の一部が欠損したり、ノイズで妨害を受けることがよく発生します。それに対して復調回路で信号補完処理を行い、欠落した信号を穴埋めして正常に再生する工夫が行われます。

 これは、CDやDVDでも同じことで、CDディスクの表面に傷がついても、正常に音楽の再生ができるよう信号補完回路が働いています。これはデジタルならではの大きなメリットです。
アナログレコード(LPレコード)では、真新しいLP盤ならきれいな音楽が再生できますが、盤が古くなると雑音がもろに出ます。こういう信号劣化に対しデジタル機器は実に威力を発揮します。
 同様にFreeDVも、通信が可能な状態であれば、ノイズがゼロで混信もなく素晴らしい通話が行えます。
逆に、あるレベル以下に、SNR(信号対雑音比)が悪くなると、音が途切れたり、最悪は音が全く聞こえないということになります。極端に言えば、デジタル通信は聞こえるか聞こえないか、一かゼロになります。これに対し、従来のSSBやFMなどアナログ通信は、雑音があるが聞こえるという中間の状態があります。

 物事には、一長一短があることがよく分かりますね。

『FreeDV』システムについて
 運用中のFreeDVシステム(シャック)
 
 



 FreeDVシステム結線図
 

 以下、参考資料