2023年11月5日(日)
もうすぐ、蛍光灯(管)が買えなくなるわけは?
家庭や工場や事務所の室内の照明は、蛍光灯が沢山使われている。それまで、長い間、電球が使われてきた。電球の歴史は大変長く、エジソンが初めて実用的な電球を発明したと言われている。エジソンが苦労したのは、電球の寿命であった。当時の電球は点けるとすぐに切れてしまった(約50時間程度)。いろんなフィラメントの材料を世界中から調達して研究したが、1879年、日本の竹(京都の石清水八幡宮の境内の真竹)の繊維が良いことが分かり、一気に寿命が1200時間に延びた。その後、さらに改良が進み、タングステンが数千度の高温に耐えることが分かり、フィラメントの材料に定着した。タングステンの融点は3300℃ その後、電球寿命を延ばす研究が進み、真空にして、アルゴンガスなど不活性ガスを封入し、フィラメントの蒸発を押さえ、脆いタングステンの加工法も開発されコイルに巻き、さらにそれをコイル状に巻いた二重コイル電球となり、電球の技術開発は一段落した。 電球は点灯すると、フィラメントの電気抵抗により発熱し、高温状態になり、発光するという単純な原理を使っている。高温になるのでガラス管に触れれば、やけどする危険がある。さらに、高温は周囲に光と同時に熱を放散するので、光源としては電力利用効率が低い。無駄な電気を食うことになる。 そこで、電気抵抗を使う電球から、放電現象を利用して、消費電力を下げる蛍光灯が開発された。 蛍光灯でも、点灯時に管に触れると、少し熱く感じるが、電球のようにやけどはしない。 蛍光灯は放電管の一種なので、点灯させるためには、点灯回路が必要になる。 ![]() 上図は、蛍光灯の点灯回路である。点灯動作する原理は、交流電源と書いた部分に、家庭用AC100Vをつなぎ、スイッチを入れると、まず、グロースタータ(一般にはグロー球)の接触していない電極間に電圧がかかる。グロー球内にはアルゴンガスを封入している。アルゴンの放電電圧は数十ボルト(60V程度)と低いので、青白い放電が開始される。この放電により、電極の温度が上がる。可動電極にはバイメタルという金属が使われていて、温度が上がると、曲がる性質がある。そのため、両電極がくっついて短絡する。 短絡すると、蛍光ランプの電極(フィラメント)に電流が流れ、電極が熱せられる。フィラメントには温度が上がると、電子を放出する材料が塗られているので、大量の電子が両方の電極から放出される。この電極は交流で動作しているので、片方がプラス電位の時、反対側の電極はマイナス電位になっている。電子はマイナスの電荷をもっているので、プラス電極側に引き寄せられる。電流の向きが変われば、逆の電極側に電子が到達する。 ここで、放電が始まるための工夫が一つ使われている。それが今回問題になっている水銀である。蛍光管内には、製造時に、1滴の水銀を封入している。 水銀を封入しているわけは、管内は水銀から水銀蒸気で充満している。水銀蒸気により、両端の電極から放出された電子が水銀蒸気に当たると、アーク放電という放電現象が生じる。この水銀のアーク放電は通常、目に見えにくい光(紫外線)であり、直接、照明管には使えない。この紫外線が当たると、発光する蛍光塗料を管の内側に塗布している。このような現象を利用して、蛍光管が光を発する。蛍光灯には、昼光色、昼白色、電球色など色の見え方が違う(これを演色性という)種類の蛍光管が販売されている。これらは、管内に塗布している蛍光塗料の材料の調合の違いによるもの。 蛍光管には、最近明るく見える3原色RGB蛍光管が販売されている。これは、カラーテレビにブラウン管を使っていた頃の名残で、光の3原色(R・G・B)赤・緑・青の光を発する蛍光塗料を調合して塗布していたので、発光効率が高く、モノによっては鮮やかに見える蛍光管だ。値段は普通の管より少し高い。 さて、蛍光管のアーク放電が始まると、両方の電極間の電位(電圧)が急に下がるので、グロー球の電極にかかる電圧が下がり、グロー放電が停まる。グロー放電が停まれば、電極の温度が下がり、グロー管の可動電極は元の真っ直ぐな状態に戻り、両方の電極は開放状態に戻る。 もう一つ、安定器という部品がある。これは電気部品としてはチョークコイルとも呼ばれる部品だ。 トランスのように鉄心にコイルを巻いただけの単純な部品である。この安定器の役割は、蛍光管が点灯状態では、アーク放電の特徴である放電維持電圧が非常に低いので、安定器で電流を制限している。ここの安定器が無ければ、蛍光管には大きな電流が流れて破損してしまう。それを防ぐ働きをしている。 もう一つの安定器の動作として、グロー管がチカチカ放電のON,OFFを繰り返すとき、コイルの誘導作用により高い電圧を瞬時に発生する特質を生かして、蛍光管の放電が成立するのを助ける作用もある。 安定器には、常時電流が流れるので、幾分かの発熱が生じている。発熱がある部品は不要な電力を消耗する。そこで、最近の蛍光灯器具には、インバータ点灯回路という電子回路で省電力を図った器具が多く販売されるようになった。 話を本題に戻そう!。 蛍光管には、形状的には、直管(真っ直ぐな管)と、円形管(サークラインともいう)の二種類がある。 どちらも点灯原理は全く同じである。 管内に水銀を使っているので、「水俣条約」により、蛍光灯の製造販売を中止する動きが報道されている。 11月5日朝日新聞・朝刊の記事 水俣病の原因である水銀を包括的に規制する国際ルール「水俣条約」の締約国会議が3日までスイス・ジュネーブで開かれ、直管蛍光灯の製造と輸出入を2027年末で禁止することで合意した。環形蛍光灯などはすでに25年までと決まっており、家庭やオフイスで使われてきたすべての蛍光灯の製造が終わる見込みになった。 常温で液体の水銀は、蛍光灯をはじめ、体温計や電池などに広く使われたが、毒性も強く、水銀を原因物質とする水俣病の被害も起きた。健康被害や環境汚染を防ぐため、13年に熊本市で条約が採択され、17年に発効。現在147カ国地域が加盟している。会議に参加した米国のNGO「クラスプ」によると、禁上の年限について、一部の国は30年などの遅い時期を求めたが、すでに利用可能な代替品があることなどを考慮し、27年で合意したという。年限をめぐっては、欧州連合(EU)などが25年を求め、日本などは27年以降を主張していた。条約の対象は製造などで、在庫の販売や今あるものを引き続き使うことはできる。国内では直管は一部の企業が製造している。一方、蛍光灯からエネルギー効率の良いLEDへの転換が進むことで脱炭素の効果も期待できる。クラスプは、27年までにLEDに転換できれば、世界で50年までに累積2.7ギガトンの二酸化炭素削減が可能と試算している。 LEDの発光効率が改善され、演色性もよくなり、価格も安くなり、寿命が長くなり、水銀汚染問題の解消、省電力による炭酸ガス削減効果など、良いこと尽くめの効果が期待できる。 技術の進化は、果てしなく続く! |
2023年11月1日(水)
年賀状の準備の時期が近づいてきました!
プリンターインク代に困っていませんか?
プリンターメーカの回し者ではありません。素直なユーザの声です!
パソコンが盛んに使われるようになり、加えて、スマホやデジカメで撮った写真をハガキやプリント用紙や、その他、いろんな用紙にインクジェットプリンターで行なうことが増えてきました。 最近まで、写真をいかにきれいに印刷するか、印刷品質の競争がセールスポイントになっていました。カラー印刷では、基本的に、インクはC・M・Y(青・赤、黄)の3色と、BK(黒)の4色のインクを使っています。 C・M・Yカラーに中間色のインクを加え、6色のインクを使うプリンターが登場しました。そのおかげで、カラー印刷が大変きれいにできるようになりました。 一方でインク代がバカにならず、あっという間にインクタンクが空になり、インクタンクの交換をたびたび行う必要がありました。純正インク代がなぜか高価なので、『メーカはプリンター(ハード)そのものは安く販売して、インク代(ソフト)で儲けている』という話まで巷では言われていました。 プリントした時のきれいさや、カラーの色表現はプリンターヘッドのドットの細かさに依ります。最近は安い機種でも、ドット数が多くなりましたので、各社で大きな印刷品質の差がなくなりました。 純正インク代は各社とも値段が高く、安い互換インクも販売されていますが、プリンターヘッドの目詰まり等、トラブルが生じた場合、補償期間内でも無償修理はありません。このヘッドが1万円以上と非常に高いので、互換インクの使用も躊躇しますが、割り切って使ったこともあります。 詰め替えインクはタンクにインクを注入するという作業が要ります。うまくやらないと、インクが手に着くと洗剤で洗ってもなかなか落ちませんので、ゴム手袋をはめて、慎重に作業するという厄介なことでした。 また、詰め替えインクを補充しても、インクの残量表示がされなかったり、何回もヘッドクリーニング動作が繰り返されたり、メーカがユーザに嫌がらせをしているような印象を受けました。 この安い互換インクの件で、純正インクのタンクを流用して中身を補充して販売したり、インクタンクの形状を同一にして、安く販売していましたので、大手プリンターメーカは、訴訟を起こして、互換インクの販売中止を争ったりしました。 最近、やっとユーザの声が届いたようで、満足できるプリンターが販売されるようになりました。 先陣を切ったのは、キヤノンだと思うのですが、間違っていたらごめんなさい!。 『ギガタンク搭載』プリンターの一例です。 現在使用中のプリンター ![]() ![]() メーカは、大量の印刷をするユーザ向けという触れ込みですが、大きなインクタンクには今までの数倍以上のインクが入っていますので、インクを気にしないで、ドンドンカラーも白黒も印刷できます。 しかも有り難いことに、この大量印刷タイプのプリンターの価格は高くありません。 キヤノンの宣伝をするつもりはありませんが、他のメーカ(エプソンなど)も同様な大型タンクを搭載した機種が販売されています。 今使っているプリンターは、CANON G3360です。これは、3色カラーギガタンクとクロのギガタンク、計4個のギガタンクを搭載しています。CANONは、大型タンクをギガタンクと呼んでいます。 プリンターヘッドは、4800×1200dpiですので、高精細印刷ができます。ただし、主観ですが、カラー印刷の場合は、以前の6色インクタイプと比べると、色の表現は明らかに落ちます。少しカラーの色の乗りも悪いようです。普通に見る範囲では、このレベルで十分だと、思います。 その他の機能は、カラースキャナー、WiFi接続ができます。 値段は、30000円少々という価格ですので、これから、年賀状の印刷など、大量のカラー印刷する場合は非常に安くできます。 プリンターメーカは、従来の多機能、高品質カラー印刷タイプの機種と、大量印刷向けのギガタンクを搭載した機種の両方を販売していますので、使用目的に合わせて買えばいいと思います。 最近、コンビニでもSDカードを持参すれば、きれいなカラー写真がプリントできるようになりました。カメラ店や、他のプリン業者もたくさんありますので、大判の写真をプリントしたりもでき、便利になりました。 |
2023年10月19日(木)
ホンダジェットが「ライトカテゴリー」に進出!
2023年10月17日Hondaニュース リリースによると、ホンダジェットは、現在、販売中のベリーライトジェットカテゴリー「Honda EliteⅡ」に加えて、1ランク大型のライトジェットカテゴリーに進出すると発表した。この新型機は「HondaJet Echelon(エシュロン)」と命名され、 2026年の初テスト飛行、続いて2028年に製品化を目指すとされている。
Hondaの航空機事業子会社であるホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company 以下、HACI)は、10月17日から19日まで米国ネバダ州ラスベガスにて開催されている世界最大のビジネス航空機ショー、2023 ビジネス アビエーション コンベンション アンド エキシビション(2023 NBAA-BACE)に新型小型ビジネスジェット機の名称「HondaJet Echelon(ホンダジェット・エシュロン)」を発表しました。 HondaJet Echelon(飛行イメージ) HondaJet Echelonは、あらゆる面で移動効率を高め、ライトジェット機より上位カテゴリーと同等レベルの飛行体験を提供します。Honda独自の技術である主翼上面エンジン配置、自然層流翼型・ノーズ、コンポジット胴体をさらに進化させることで、乗員・乗客合わせて最大11名が搭乗できます。また、競合のライトジェット機より20%、上位カテゴリーの中型ジェット機に対しては40%以上燃費を向上させることで、ライトジェット機として世界で初めてノンストップでのアメリカ大陸横断を可能とします。客室においては、長距離飛行にも適した広いキャビン空間と優れた静粛性を実現し、快適で高効率な移動によるプレミアムなオーナーシップ体験を提供します。
この記事を読んで、三菱航空機 MRJが型式認定を取る見通しがつかず頓挫し、数千億円の開発費を無駄にして、ジェット旅客機の市場から撤退したという話を思い出した。クリックしてご覧ください。 |
2023年10月18日(水)
トヨタ工場のラインストップについて
新聞によると、トヨタのいくつかの工場の製造ラインがストップしたようだ! 世界のトヨタの工場のラインが止まったという話だ! 一体何があったのだろう? 実は、車に使う部品、今回はバネが間に合わなくなったからのようだ。車にはいろんなバネが使われているので、どのバネか分からないが、その原因はバネの仕入れ先の工場がトラブルで、必要なバネが入ってこなくなったという話だ! ここで、疑問を感じる人も多いはずだ。車には約4万点の部品が使われている。(余計なことだが、EVになれば1万点ぐらいになるらしい。)その内の一つがバネになる。いろんなバネが使われているので、バネだけで数百点以上になると思う。 車を支える主力のバネ類 ![]() 新聞報道によると、 バネの供給元である『中央発条』の工場で、爆発・火災が発生し一部のバネの生産が停止した。この影響を受け、2023年10月17日現在、トヨタ自動車の車両を組み立てる6つの工場が影響を受け、10本の生産ラインが稼働を止めている。 バネの生産を停止しているのは、中央発条の藤岡工場の第4工場(愛知県豊田市)。 この内、材料であるバネ鋼に1次加工を施す中の「熱処理工程」で、10月16日12時15分頃に爆発・火災が起き、乾燥炉と建屋の一部が損傷しているという。 これにより、自動車用バネの出荷が止まり、同年10月16日にトヨタ車体の吉原工場(同市)と富士松工場 (愛知県刈谷市)の2工場の3ラインが、2直(夕方以降)から稼働を停止した。 翌17日からは同社のいなべ工場(三重県いなべ市)と、トヨタ自動車の高岡工場(豊田市)、堤工場(同)の全ライン、および1ラインを除く豊田自動織機の長草工場(愛知県大府市)のラインも1直から稼働を止めている。 中央発条によれば、トヨタグループ以外にも自動車向けにバネ部品を供給しているが、他の自動車メーカへの影響は分からないという。ただし、中央発条は11工場を有しており、他の工場は稼働中。第4工場を経なくても、今回出荷が止まったバネ部品を造れるため、他の工場での代替生産も検討するという。 トヨタ車のラインの再開時期については「本日(同年10月17日)午後に判断し、夕方頃に決まる」という。 ここで、ふと気が付いたことがある。トヨタ自動車は、“Just in time”という『生産ラインに必要な分だけ部品をラインに供給し、余剰の部品在庫は持たない』という方針を貫いてきた。余剰の部品を持つこと、即ち部品在庫を持つことは、置き場所をとり、不要なコストがかかる。その在庫ロスコストを削減するため、綿密な計画をたてて、計画どおりに必要量だけ納品するよう部品のサプライヤー(協力会社)に要求してきた。そのことは究極の無駄を無くす生産管理手法として、自動車だけでなく、製造各社が見習ってきたことである。いわゆる「部品在庫ゼロ作戦だ」 今回は、その“Just in time”の取り組みが、アダになり、バネという部品不足で、車の製造ラインが止まるというハプニングにつながった。言い換えれば“Just in time”がアキレスけんになった。 いつも思うことだが、「世の中はいいこと尽くめではない、いいことがあれば、必ずその反面も起きる」という二律相反の関係があるということの事例だと思う。 いいことであっても、必ずその反面の出来事が起きる。その時に、大事に至らないように手当をすることが大切だということを知った。 今回のトヨタの工場のラインストップがどれほどの被害につながるか分からないが、世界のトヨタなので、大きな損害にはならないと思う。しかし、この出来事で、納車を待っているユーザは、手元に予定どおり車が届かないはずだ。そういう事態が起きないように、メーカは2重・3重に対策を打っている。それでもこういうことが起きる。 モノを造るということは、部品と作業で成り立っている。最近はそれらをコンピュータでコントロールしている。このコンピュータシステムが何かのトラブルで停止すれば、部品の調達や作業の進捗管理等のあらゆる管理が停止する。そういうトラブルは大トラブルに発展する可能性が大きい。 高度で複雑な生産システムによることが大きい製造ラインでは、システム管理が非常に重要な要素になっている。 今回のバネという部品の入手が停まったという事故は単純な要因であり、復帰が早くできるはずだ。 トヨタのいくつかの製造ラインストップのニュースを読んで、感じたことをまとめてみた。 10月19日も引き続いて止まるようだ。 |
2024年8月4日(日) 追記
2023年10月14日(土)
人類700万年の進化
■人類学の進歩が著しい。 人類学は20世紀まで化石の収集による各部位の形状分析が主体であった。その化石は体全体が採集されることは極めてまれで、しかもバラバラの状態で発見されるのが普通であった。 そういうわずかな化石を収集して、体全体像を復元することは、実物と一致しているかどうかも危ういことであった。しかし、多くの資料を基に復元することは、ある程度、信憑性が担保できる。それが従来の古代人類学であった。 ■20世紀に入って、DNA解析手法が進歩し、人ゲノムが完全に解析されるようになった。その結果、化石に極微量残っているDNAを抽出し、古代人遺伝子分析が可能になった。 ミトコンドリアDNA分析法は、16,500個のATGC塩基配列を解析できた。その後2006年に開発された『次世代シークエンサー法』は30億個のATGC塩基配列が読めるようになり、これにより、従来の100万倍の遺伝子データを取得できるようになった。 化石に残っている極わずかなDNAの断片(4つのATGC塩基部分)からそれを抽出し、現在人のゲノム配列のどの部分に相当するか、またはどの部分が違い、どの部分が一致しているかをAIなどの大量情報解析システム技術を駆使することで、太古の化石からその人類の特徴が科学的に分析できるようになった。 これにより、70万年~100万年前の人類のDNAが読めるようになった。何万年、何十万年以前の年代測定は炭素年代測定法に依る。それ以前の時代の化石は見つかっていないので解析ができない。 従来の化石による見た目での分析手法では分からなかった人類の移動、進化の姿が科学的根拠をもって知ることができるようになった。これは人類史上、非常に革新的な出来事である。 ![]() 猿人、原人、旧人、新人(ホモサピエンス)に至る人類の進化の様子も次第に解析できるようになった。 その結果、アフリカで人類が発生し、その後、約100万年前から、次第に世界各地に拡散して住むようになり、各地で古代文明を展開した。上図は人類の分岐図 ![]() 『猿人、原人、旧人は新人に至る間になぜ絶滅したのか?』という疑問に対し、以前の考古学(化石の分析による考古学)では説明がつかなかった。ゲノム分析ができるようになり、ネアンデルタール人やデニソワ人等の旧人は、新人と互いに交配(交雑)して、古い人類の遺伝子を受け継ぎながら適応力の優れたホモサピエンスが生まれ、現在に至ることが分かってきた。 私たち日本人のルーツも分かってきた。それによると、3つの集団が元になっている。 ![]() 日本の文化も、旧石器時代から現在まで下図のように考えられる ![]() 今まで、日本史で旧石器時代、縄文時代、弥生時代、古墳時代、・・・・という流れで学んできたが、もともと日本本土に住んでいた人(と言っても、元、日本列島はアジア大陸と陸続きだった)、沖縄本島、付近の島に住んでいた人、北海道に住んでいた人の融合で、現在の日本人が成り立っているという。 (注)上の4枚の図は、Youtubeより 興味のある方は、下記の新書または youtubeをご覧ください。 ・ 『人類の起源』 篠田謙一氏著 中央公論新書 定価1056円(税込み) ・ https://www.youtube.com/watch?v=bw2pLH7v8Rw 話を戻して、人類が他の動物と別れて、特別な進化を遂げた理由は、次の『直立二足歩行』に要因があることが分かってきた。 以下、NewsWeek の興味ある記事を一部紹介する、 ■ヒトの直立二足歩行の謎をAI分析で解明、 「骨格のプロポーション」が鍵 脚と脊椎を地面に対して垂直に立てて歩く「直立二足歩行」は、生物のうちヒト(人類)だけが行える。 最も古い人類は、今から700万年から600万年前にアフリカに現れた「猿人(えんじん)」と言われている。 脳の容量や知能はチンパンジーと変わらなかったと推測されるが、骨格化石や足跡化石から『直立二足歩行』していたことが明確に分かるので、最初の人類として分類されている。 その後、猿人、原人、旧人、新人(ホモサピエンス)と進化してきた。 ■では、人類を人類たらしめている『直立二足歩行』は、なぜ可能になったのか? ヒトの骨格はどのように他の動物と異なる進化をしたのか? 米テキサス大オースティン校などの研究チームは、現代のヒト(現生人類)について、3万人分以上の骨格のX線写真をAIで分析し、同時に遺伝子解析も行った。その結果、ヒトの『直立二足歩行』を可能にした「骨格のプロポーション(骨の比率とバランス)を制御する遺伝子」を発見したと7月21日付の米科学学術総合誌「Science」で発表した。詳細は、後記を参照。 ■直立二足歩行のおかげで高い知能を獲得? ヒトの『直立二足歩行』の進化要因は未だによく分かっておらず、いろいろな仮説がある。よく知られているものだけを上げると、 (1)食物を求めて広い範囲を動き回るには四足歩行よりも『直立二足歩行』の方がエネルギー効率は良く 疲れないからという「移動効率説」、 (2)『直立二足歩行』の方が四足歩行よりも目の位置が高いため遠くの外敵を早く発見できて危険を回避 できたという「危機回避説」、 (3)ヒトが類人猿から分岐する過程で半水棲だったからとする「アクア説」、 (4)大脳が大きくなっていくうちに四足歩行ではバランスがとれなくなったと考える「バランス説」 (5)食料や道具の材料の木材や石などを1度にたくさん運べて都合がよかったからという「運搬説」 (6)ヒトは男が女に気に入ってもらうために、あるいは子育て中の女のために食べ物を運んだため 「プレゼント仮説」「子育て仮説」 ■『直立二足歩行』ができるようになったヒトは、頭を体の真上に置いて支えることが可能 体のわりに大きな頭部を持てるようになりました。その結果、体重に対して巨大な脳容積を獲得し、全動物の中で最も高い知能を得ることができた。 また、腕(前脚)が歩行から解放されたことで、重い物を運んだり、複雑な作業ができたりするようになった。このことが、さらにヒトの知能を発達させたと考えられていまる。 ■直立二足歩行は良いことばかりではありません。 ヒトは腰痛になりやすく、重力の影響を受けやすいため他の動物ではほとんど見られない痔や胃下垂にも 罹患しやすい傾向がある。脊椎動物では心臓や腹部、喉などの急所は胴体の前面にあるため、四足歩行の動物であれば地面との間に隠されるのに、ヒトでは常に晒(さら)す。しかも、命に関わる急所である後頭部は地面から高い位置にあるため不安定で、後ろに転倒すると危険です。 さらに、四足歩行の草食動物は生まれたばかりで立ち上がり歩行も可能ですが、ヒトが直立二足歩行をできるようになるのは生後1年前後です。ヒトの子は自力で逃げられない無防備な時期が長いという特徴がある。 ■ちなみに他の動物は、二足歩行自体はそれほど珍しい歩き方ではありません。 ペンギンや一部の鳥類は常に二足歩行をします。ただし、ペンギンは脊椎と下腿骨(膝から足首までの骨)は地面に対して垂直に立てられますが、大腿骨は脊椎に対してほぼ直角で、常に膝を曲げた状態になっている。鳥類では二本の足で歩くものも多いですが、脊椎は地面と水平に近い角度です。常に直立で二足歩行することは、チンパンジーやゴリラなどの類人猿でもできません。 ■ヒトゲノムの145カ所が骨格形成に関与 今回の研究チームは、AIの機械学習を用いて、ヒトに特有な直立二足歩行を可能にした遺伝子を解明しようと試みた。 まず、英国バイオバンクの参加者3万人以上について、二重エネルギーX線吸収測定(DXA)で撮影した全身骨格の画像をAIに学習させて、すべての長骨(大腿骨、脛骨などの縦方向が幅よりも長い骨)の長さ、腰や肩の幅、骨同士の距離などを数値化した。 次にそれぞれ骨格の特徴と参加者の遺伝子配列とを照らし合わせて、相互の関係を評価した。 その結果、ヒトゲノムの145カ所が骨格形成に関与していて、「骨格のプロポーション」をコントロールしていることが分かった。また、すべての骨格のプロポーションは、遺伝性が高い(約30~50%)こと、四肢の比率は 体の幅や胴の長さの比率とは相関していないことも示されました。 さらに、ヒトの腕と脚と腰の幅の比率が進化的に変化したことを示す遺伝子の証拠も見つかった。これは化石を使った形態学的な研究の結果と一致している。また、骨格のプロポーションに関する遺伝子は心血管や自己免疫、代謝などの他の形質とは対照的に、ヒトと類人猿の間では著しく異なっていた。 この研究は、ヒトが進化の過程で過去にたどったことのみを解明しただけではありません。 たとえば、身長に対してお尻の幅が広いほど変形性関節炎や腰痛になる可能性が高い、身長に対して大腿骨が長いほど膝にトラブルを抱えやすいなど、関節のトラブルに関係する遺伝子の変異や骨格の特徴も突き止められた。 現在は「人生100年時代」とも言われる。関節炎は「高齢者の寝たきり」につながるなど、QOL(クオリティオブライフ)を大きく左右する。人類の700万年の進化と、個人の健康に関する知見が1つの研究で明らかにされるのが科学研究の興味深いところ。 生物、人類の歴史にも、外界の変化に適応し生き残るため、進化を遂げてきたが、『直立二足歩行』は人類が他の動物と一線を画して、著しい進化を遂げる要因になったと言われる。しかし『直立二足歩行』にも、長所と欠点(弱点)があることを学び、物事は良いこと尽くめはないことを改めて思い知った。 物事は、二律相反、トレードオフの関係で、表裏一体で成り立っている。 |
2023年10月14日(土) 改定・追記
ノーベル賞が全て発表されました。
朝は20℃を割り込み、最近は15、6℃ まで下がり、半袖シャツでは寒くなり、1,2枚よけいに羽織る季節になってきました。この時期の恒例行事は何と言っても、『ノーベル賞』発表が話題になります。 今年のノーベル賞各賞の受賞者は、 ・10月2日(月) 医学生物学賞;m-RNAワクチン開発; ・10月3日(火) 物理学賞;アト秒のパルス光発生装置; ・10月4日(水) 化学賞;量子ドットの発見と合成に関する業績; ・10月5日(木) 文学賞;劇作家 ノールウェイ人 ヨン・フォセ ・10月6日(金) 平和賞;イラン人活動家(女性) ;マネルケス・モハンマディ ・10月9日(月) 経済学賞;男女の格差 ;ゴールディン(女性) これで、ノーベル6賞が全て決まります。 今年のノーベル生理学・医学賞は、コロナワクチン開発に成功したハンガリア人のカタリン・カリコ博士と、ドリュー・ワイスマン博士(ともにアメリカ・ペンシルベニア大学)が選ばれました。コロナウイルスのパンデミックにより世界が震撼していた時に、救世主として登場したmRNAワクチンが注目され世界の多くの人命が救われました。また、このワクチンは感染予防にも大きな効果を発揮して、パンデミックを抑え込みコロナが終息するに至りました。 この素晴らしい発見の裏には、大変な苦労が積み重ねられていることを報道で知りました。 カリコ博士はハンガリア人女性で、『RNAをメッセインジャーとして用いる』という今までのワクチン製造方法では考えられない全く新しいアイデアを成功させました。従来のインフルエンザワクチンなどは受精卵にウイルスを入れて増殖させて抽出するか、ウイルスを弱毒化して使う方法が一般的だったそうです。 カリコ博士のmRNAワクチンは遺伝子合成で生成できるので、短時間に大量のワクチンが製造でき、その結果、世界の人々の命を救ったのです。 しかし、mRNAをワクチンとして使用するという発想は、理論上は可能でも、人体の拒否反応が強くて使用ができないと言われていました。その従来の常識を覆した点が非常に大きく評価されています。 そういえば、ペニシリンを発見したフレミング博士を思いだします。ペニシリンという抗生物質は、ウイルスが相手ではなく、細菌に対する話です。 1928年、フレミング博士が、ブドウ球菌の培養実験をしていた時、たまたま、アオカビが混入して、その部分だけブドウ球菌が繁殖していないことに気づき、このことを確かめるために青カビの培養液をろ過したところ、抗菌物質の存在を突き止めることに成功したのです。 実験は目的物のブドウ球菌だけを培養することにあるが、たまたまシャーレ内の寒天培養地に、アオカビが混入して生じた現象を見落とさなかったことです。 純粋なモノに不純物が混入することを『コンターミネイション』と言います。目的物以外のものが混入することは実験や製造過程ではよく起きることです。 今後、さらにRNAやDNAの遺伝子の組み換えで、いろんな薬品が開発されることが期待されています。 話が逸れましたが、ノーベル物理学賞は、「アト秒のパルス発生のしくみ」です。 単位を表す言葉にはいろんな名前がついています。 単位には、 ・大きい方に、キロ(千=1000=103)、メガ(百万=1000000=106)、ギガ(10億=100000000=109)、・・・ ・小さい方に、ミリ(1/1000=10-3)、マイクロ(1/106=10-6)、ナノ(1/10億=1/109=10-9)、ピコ(10-12) さらに、フェムト(10-15)、アト(10-18)と続く。 今回のノーベル物理学賞は、アト秒というごく短時間、発光させる装置に関するものだ。 電気(光)が伝わる速さ、または光の速さは、30万km/秒と言われる。地球を一秒間に7周半する速さだ。 これを、メートルで表示すると、30×10000×1000=30×104×103=3×108m/秒 だから、アト秒でスイッチして光をon-offする間に進む距離は、3×108×10-18=3×10-10m 言い方を変えれば、 3×10-10=0.3×10-9=0.3nm(0.3ナノメートル) 電気(光)は、1秒間に30万Km進むが、1アト秒では、0.3nm進むということ。 単位の説明図(朝日新聞より) ![]() この超短時間に光を照射すれば、電子の移動する状態が目で見えることになる。 地球を1秒間に7回半廻るほどの高速でも、測定時間を超短時間にすれば、一瞬を切り取ることができるということ。 例えば、高速回転している軸に、点滅するストロボを照射すると、軸の回転が止まって見える。この時のストロボの点滅する数値を読むことで、軸の回転数が分かるのと同じ理屈である。 この方法で、半導体電子回路中で電子がどういう振る舞いをしているのかを知ることができるようになった。 どうやら人類は、目で見る範囲の物事を対象にしていた時代から抜け出して、何光年という宇宙の果てしない空間に思いをはせ、また逆に分子や原子の領域まで手を伸ばしてきた。果てしない追及の歴史を刻んでいる。 そういう実感を抱いていたが、10月6日朝日新聞 朝刊の天声人語に次のように書かれていた。
最近の科学技術の発展にはただただ驚くばかりである。 ノーベル賞受賞の内容を読んでみても、理解しがたいことが多くなってきた。 |
2023年9月30日(土)
我われの自由とロシア人の自由 どちらが幸せか?
昨夜は『中秋の名月&満月』だった。雲一つない夜空に東南から満月が顔を出した。久しぶりにカメラを構え写真を撮った。満月の明るさは昼間と変わらないようで、ISO感度や絞りやシャッターの合わせ方に戸惑った。何とかやってる内に何枚かの写真を撮った。直に眺めた月は大きく見えるが、カメラに納まった月は小さな輝いた丸でしかないので、相当な望遠レンズを使わないと満足する写真は撮れないことが分かった。 中秋の名月=満月は数年に一度らしく、次回は2030年になると言われている。その月が見えるかどうかは疑わしい歳を迎えている。 さて、ウクライナへのロシアの軍事侵攻は先が見えなくなってきた。当然、他国に侵略する方が悪いに決まっているが、当事者のロシアプーチンにすれば、彼なりの大義があるのだろう。残念であるが、プーチンの大義は、我われの大義と価値観が違うので、互いに折り合うことはできない。 ロシア人、プーチンのいだく大義は「ウクライナに住んでいるロシア人をネオナチから守る」ということであるが、ウクライナに住んでいるロシア人に直接、迫害を受けているか?と聞けば、今まで互いに隣同士で暮らしてきて、親しく付き合い、中には互いに姻戚関係を結んでいる家族も多い。 国境付近に住んでいる人々が平和に暮らしているところに、軍隊が侵攻して領土を奪うという有様はどういうことがあっても許されない。 なぜそういうことが起きるのか?いろんな意見があるが、東洋経済に佐藤優氏の記事が掲載されていたので紹介させて頂く。これを読めば、なるほど、ロシア人特有の思考が見えてくる。 以下、佐藤優さんのコラムの抜粋 佐藤優氏は、戦争を止めるにはロシア人の内在論理を知ることが重要であり、それにはドストエフスキーの名著である『カラマーゾフの兄弟』を読むことが最適だと主張します。そこでは何が描かれ、何が語られているのでしょうか。『これならわかる「カラマーゾフの兄弟」』から抜粋。
それに加えて、いまドストエフスキーの長編小説『カラマーゾフの兄弟』を読むべき理由があります。ロシアとロシア人の内在的論理を知るためです。
<原著からの引用> 人間は単純で、生まれつき恥知らずときているから、その約束の意味がわからずに、かえって恐れおののくばかりだった。なぜなら人間にとって、人間社会にとって、自由ほど耐えがたいものはいまだかつて何もなかったからだ!
<原著からの引用>
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2023年9月25日(月)
中国の本音は? 得意の嫌がらせか?
『暑さ寒さも彼岸まで』とはよく言ったもので、24日に彼岸が過ぎて朝の気温はぐんと下がった。昨日は18 ℃に下がり、下着を着るほど寒かった。日中は相変わらず30℃を超える暑さだが、湿度が低くなり過ごしやすくなってきた。『灯火親しむ候』とまで行かないが、最近、古代ギリシャ、古代ローマの歴史本を読み漁っている。 これについては、別の機会に感想などを書いてみたい。 今回は、福島原発事故で発生する大量の汚染水をALPUSという多核種除去フィルターを透して、こし分けた水、通称『処理水』の海洋放出が始まり、さっそく中国、韓国が反発し、中国は日本からの漁貝類の輸入禁止を行なっている。監督官庁、元農水大臣が『処理水』を『汚染水』と言い違え、一時話題に上った。 小生は、『汚染処理水』だと思う。日本政府や東電は、“汚染”という言葉に神経を尖らせているので、汚染を省いて処理水と言っている。 この『処理水』は、ALPUSではトリチュウムが除去できないので処理水中に含まれる。ただ、トリチュウムは水素原子が3個並んで酸素と結合し水になっている。自然水の中にも、僅かのトリチュウム水が存在する。規定値より低い含有量であれば、特に健康上の問題は生じないと言われている。 9月25日、朝日新聞朝刊に、『中国漁船が日本の東北地方の沖合いの公海で、サンマやサケ漁が盛んに行われている』と報じている。公海での漁業であれば、資源保護のための国際条約を守って漁獲することは問題ない。 しかしである。中国漁船がここで取れた魚は、持ち帰り中国国内で売りに出している。一方、日本の漁船が同じ場所で採った魚は汚染されているので、輸入禁止処置を行っている。 これが中国だ! 朝日新聞によると、分かりやすい説明図が示されている。 ![]() 日本沖で操業、持ち帰れば「中国産」 福島第一原発の『処理水』放出が始まり、中国政府は中国への日本産水産物の全面禁輸を実施してから24日で1カ月となった。日本の北東、沖合の北太平洋ではこの間も、中国漁船が日本の漁船と同じ海域でサンマ漁などを続けている。 日本漁船が日本の港で水揚げすれば「日本産」となり、中国は禁輸とするが、中国船が自国に持ち帰れば「中国産」として流通できる。 船舶に搭載された「船舶自動識別装置(AIS)」の信号から洋上の位置や操業状況を特定できる「グローバル・フィッシング・ウォッチ(GFW)」で北太平洋上の中国船の活動を調べた。中国船が多数確認できたのは、北海道根室市から約1千キロ沖の公海。サンマやサバ、イワシなどの漁が行われる北緯40~50度、東経150~170度の海域だ。8月3日時点でこの海域に中国船は156隻。9月19日にも162隻が確認できた。 処理水放出をはさんだこの間、1日当たり146~167隻と大きな変化はなかった。中国船の数は前年同期とほぼ同水準だという。この海域は、2000年以降は中国や台湾などの漁船が増えた。近年はサンマが日本の近海に近寄りにくくなり、日本の漁船も公海で操業している。 ただ、中国や韓国の言い分もある程度理解できる。それは福島原発事故は、炉心溶融、いわゆる『メルトダウン』が起き、炉心のウラン燃料が溶けドロドロのむき出し状態になり、炉心の底を溶かして格納器の2mもある分厚いコンクリートも溶かしたが、水の注入で冷やされ、そこでウラン燃料が塊になり溶融は止まった。この状態で、ウランは核分裂により熱が発生し続けるので、事故が発生してから冷却水の注入が継続されている。その冷却水は原子炉格納器のひび割れ等から漏れ出しており、今もなお汚染水が増え続けて、福島第二原発の敷地に大量のタンクが設置されている。これ以上、タンクの設置場所がなくなり、ALPUSで処理した後の汚染水を『処理水』と称して管理し、国際原子力委員会の監視のもと、その安全性を確認して、この度、海洋投棄することになった この件について、2021年4月19日「ALPS処理水の海洋投棄は大丈夫か」に書いたので、リンクを張りますので、ここをクリックしてご覧ください。 ■ALPSで取り除けないのは、トリチウムだけではない。 ALPSは、トリチウム以外の62種類の放射性物質を告示濃度まで浄化できる能力があると言われているが、トリチウム以外にもヨウ素129、セシウム135、セシウム137など12の核種(放射性原子)は除去できない。 ■東京電力が2020年12月24日に公表した資料によると、処理水を2次処理してもトリチウム以外に12の核種を除去できないことがわかっている。2次処理後も残る核種(放射性物質)には、半減期が長いものも多く、ヨウ素129は約1570万年、セシウム135は約230万年、炭素14は約5700年。 ■「通常の原発でも海に流している」という報道も誤解を招く。 福島第一の汚染水をALPSで処理したALPS処理水と通常稼働中に出る原発排水は違う。ALPSでも処理できない核種のうち、11核種は通常の原発排水には含まれない核種です。 というようなわけで、最近、政府や東電は、『処理水』という言葉に統一して報道している。きちんと国際原子力安全基準に則り管理・処理されているので安全ですよ!という訳で、安心して下さい! となっている。 確かに放射性物質の量は国際原子力基準を満たしているが、目に見えない原子の世界であるので、不安を煽るのだろう。 一方で、中国や韓国等、外国の原発でも、放射性廃棄物は発生している。その処理は海洋投棄が主であり、一部、蒸発させて空中に放出することもある。 その場合、トリチュウムの量については日本の福島原発の汚染処理水に比べ、ハイレベルであるとも言われている。他国に対しては、厳しいことを言いながら、自国の放出には触れないという振る舞いは、2重スタンダードになる。 同様に、『同じ漁場で日本漁船が取った魚は汚染されているが、中国漁船がとった魚は販売し食べてもいいですよ』という態度は、いやがらせが得意な中国や韓国のやり方だ! |
2023年9月14日(木)
上水道と下水道の違いは?
この夏は各地で集中豪雨が発生し、大きな被害が出ました。豪雨は世界各地でも発生しました。また、台風の発生時期やコースや規模も、以前の台風やハリケーンと違った様相を呈しました。これもすべて異常気象がなせる業ですが、速く手を打たないとさらに激しい異常気象が起き、今後ますます、自然の猛威を被ることになると思われます。 中国では、沿岸付近を中心に台風と豪雨で大きな被害が出ています。よく話題になる三峡ダムは世界有数の巨大ダムで、その規模は黒四ダムの数百倍?になるようです。そこでの発電量は原発60個分の発電ができるという話です。発電量は5800万キロワットになり、100万キロワットの原発なら58個分に相当します。 三峡ダムだけで、そういう巨大な電力を生み出す水力エネルギーが得られるという話です。 中国の国土面積は950万Km2で日本の25倍以上の広さがあり、人口は日本の10倍近くあります。その広大な国土で発生する災害も巨大な被害になります。 Youtubeなどの水害の状況を見ていると、泥水が家に入り込み、堆積しています。泥水は泥だけではなく、あらゆる汚物を含めて流れます。ですから、水害の後で、疫病が発生したり、ケガをした傷口から破傷風菌が入り感染することが多いのです。非常に不衛生な状況です。 私たちは平常時は豊かな暮らしができるようになりました。蛇口を開けばきれいな水が出て、コップに入れて直接飲むことができます。風呂も、洗濯も、トイレも水洗で大変清潔になりました。普段は何も考えずに過ごしていますが、インフラが機能しなくなった時の不便さは、平生の暮らしができなくなって初めて思い知ることになります。 そこで水について少し調べてみました。 水には『上水道』と『下水道』があります。この違いは何となく分かりますが、それでは、中水道という水があることを知っていますか? 実は『中水道』もあるのです。 中水とは、飲用はできないけど、人体に悪影響がない水のことです。 わかりやすくいうと「飲めないけど、そこまで汚れてない水」のことです。中水道は 噴水や工業用水や水洗トイレなどで使われています。 中水は水を再利用できる 、コストカットできる 、非常時に使える などです。 それぞれの水の違いについて 上水道は人が飲める水を供給する水道のこと。一般家庭だと水道水、風呂の水、トイレの水で、家庭に供給される水は、すべて上水道です。 人口5000人以上を対象:上水道 人口5000人未満:簡易水道;田舎に行くと、簡易水道が多いです。 上水道の水源 ・湖、川、ダムの水などです。雨が降らなければダムに水が溜まりませんので、渇水状態になります。 最近は集中豪雨が増える一方で、雨が降らない地方では渇水ダムが増えてきました ・地下水:深い地中を流れる水で、ポンプでくみ上げて使います。 水道局で奇麗な水に加工します。 上水道に使われる管;代表的な上水道管 上水道と下水道の違いは?
面白いのは、上水道は厚生省、下水道は国土交通省に管轄が分かれていること。 |
2023年9月8日(金)
高齢者ドライバーの安全運転の秘訣
事故を防ぐため、運転する前に、足腰の屈伸運動をしましょう!